カズが最高に輝いたシーズンは? 
変貌する肉体とそのプレースタイル

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 そこからカズは、プレースタイルの変更に取り組んだ。ウインガーというサイドアタッカーから、真ん中でプレーする2トップ型FWへの転向である。それが実を結んだのがJリーグ元年=93年だった。

 よりFW的な色を強めたカズは、94年、それを武器にセリエAへ渡った。しかし、現地で見るその姿は、日本で見るカズより数段、小さく映った。フィジカル面で劣勢に追い込まれていることは明白だった。

 94-95シーズンのセリエA開幕戦。ミラン戦でフランコ・バレージと空中戦を競った際に鼻を骨折。そこから1カ月あまり、チームを離脱したことが、ジェノアから退団する時期を早めた原因だとされるが、その空中戦でなぜカズはケガをするほど無理をしたかのほうが問題だった。身体を張ることができないとイタリアでは通じないと感じ、頑張りすぎたのだ。焦る気持ちが自分自身に無理なジャンプをさせたという印象だった。

 真ん中ではなく、ブラジル時代のように左ウイングとして勝負した方が面白かったのではないか。現地でカズのプレーを見て抱いた印象だ。「93年型」の自分では、通じないことを自覚したのだろう。カズはバレージとの接触を機に一念発起した。身体を徹底的に鍛え始めたのだ。

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