過去の数字から読み解く。
今季J1で「降格なし」が与える影響は

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Kyodo News

 では、「降格あり」になった1998年以降はどうか。

 近年の熾烈な残留争いを考えると、少々意外な印象を受けるが、計21シーズンの下位2クラブ、のべ42クラブの1試合あたりの平均勝ち点はおよそ0.73。危機感を高めてくれるはずの「降格あり」になってからのほうが、平均勝ち点は0.1以上下がっている。

 もちろん、10クラブのリーグ戦と18クラブのリーグ戦では、上位と下位の実力差には違いがあるだろう。そもそもJリーグ誕生当初は、延長VゴールやPK戦が採用されており、試合方式や勝ち点制度自体に現在とは違いがあるのだから、単純に下位2クラブの勝ち点を引っ張り出して比較はできない。

 とはいえ、降格回避がモチベーションとなって、下位クラブが実力以上のパフォーマンスを発揮するとか、降格がないことでモチベーションが下がり、ズルズルと負け続けるといった極端な現象は起こっていない。少なくとも、そう見ることはできそうだ。

 1998年以降の最高値を見ても、2018年に17位の柏レイソルがおよそ1.15。最低値は2012年、2013年、2014年で、それぞれ18位となったコンサドーレ札幌、大分トリニータ、徳島ヴォルティスのおよそ0.41である。1997年以前と比較しても、大きな違いは見られない。

 昨季J1で18位に終わったジュビロ磐田の勝ち点31は、18位の勝ち点としては過去最多。一昨季17位でJ2へ降格した柏の勝ち点39も、17位としては過去最多だった。それゆえ、「降格あり」が下位クラブを刺激し、残留ラインが年々上がっている印象を受けるが、逆に2015年、2017年の2シーズンでは、下位2クラブがいずれも勝ち点30に届いていない。下位クラブの勝ち点が、必ずしも右肩上がりに上昇しているわけではないのだ。

 言い換えれば、今季J1が「降格なし」になったからといって、極端に勝ち点の低いクラブが出てくるとは考えにくく、つまりは、上位クラブにとっての"安パイ"の相手が増えることもないのだろう。

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