全国Vから14年。野洲高出身の楠神が
貫くセクシーフットボール魂

  • 鈴木智之●取材・文 text by Suzuki Tomoyuki
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 金本は高校時代、キャプテンとしてチームをまとめ、ボランチとして大活躍。瀧川は鹿児島実業との決勝戦で「高校サッカー史上、もっとも美しいゴール」を決めた選手である。

 2020年2月末、野洲高のグラウンドに楠神の姿があった。高校生に混じってトレーニングをし、合間には選手の前で話をしている。

 野洲高のコーチを務める瀧川は「(楠神は)プロの世界で10年以上やってきて、自分らにはない経験をしていると思うんです。それを選手たちに伝えて欲しいと思って、練習の合間に順平に話を振るんですけど、『毎回は無理。せめて1回だけにしてくれ』とか言うんですよ」と、笑顔で隣にいる同級生を見る。

 現役の高校生は、憧れのプロ選手であり、伝説のOBが毎日のようにグラウンドに来て、一緒にトレーニングをすることに、多少の戸惑いを感じているようだ。楠神が「みんな気を使っているのか、あまり話しかけてはこないですね(笑)」と言うと、瀧川が「話しかけるなオーラ出してるやん。すぐクラブハウス帰るやん」と返す。ふたりの会話は漫才のようにテンポがいい。

「喋るのはあまり得意ではない」という楠神だが、セカンドキャリアのことを考えると「こういうことも経験したほうがいいんやろな」と感じている。現役を終えたあとは、指導者になりたいというイメージがある。指導者になるのであれば、言葉で選手を動かす力が必要だ。瀧川が言う。

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