酒井高徳が優勝から抱いた危機感。「想像とは違う感情が生まれた」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

『これを言ったら、怒るかな?』『雰囲気が悪くなるかな?』と遠慮する必要はないと思います。それをドイツで学んだからこそ、ヴィッセルでも同じように、自分の考えはしっかり伝え、仮に言い返されても、ディスカッションして、仲よくなって、関係性を深めていくことを心がけてきました」

 結果的に、酒井のそうした行動は、チームにいい競争を生み、結束力につながっていく。練習中に、激しい言い合いになることも一度や二度ではなかったが、それはどことなくチームに漂っていた"ぬるさ"や"遠慮"を払拭した。ヴィッセルの生え抜き、MF小川慶治朗の言葉がそれを物語る。

「高徳くんが加入してから、普段の練習からバチバチとやりあうのが当たり前といった空気が漂うようになり、それがいい意味でのピリッと感だとか、アラートした雰囲気に変わっていった。僕も、何度か高徳くんと練習でやりあったこともありますが(笑)、それによって、お互いの考えていることや、やりたいことが明確になるのはすごくよかったし、そういうぶつかり合いが生まれるようになったことで、チームはより結束していったところもあったように感じました」

 とはいえ、それはあくまでも昨年のこと。と同時に、そうした変化があったとしても、結果的にJ1では8位に終わった、という現実から目を背けてはいけないと、酒井は言う。

「自分たちはたった一度、天皇杯でタイトルを獲っただけ。一歩間違えば、いつだって、去年のように(公式戦)9連敗ということが起きうるチームだということを忘れてはいけない」

 ましてや今シーズンは、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)という新たな舞台を戦うシーズンだ。すべての大会で勝ち進むことができれば、60試合もの公式戦を戦わなければいけない。そのため、総力戦になることは確実である。これまでの公式戦4試合で起用されたメンバーを見ても、それは明らかだろう。

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