酒井高徳が優勝から抱いた危機感。「想像とは違う感情が生まれた」 (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

 そうした感情は、酒井が加入した時から感じている"責任感"によるものでもある。

 本音を言えば、加入する前は、「ルーカス(・ポドルスキ)やアンドレス(・イニエスタ)が加わっても、チームが好転していかない状況を見ていただけに、『自分が入ったところで、うまくいかないだろう』と思っていた」と振り返る。だが一方で、クラブから求められ、獲得された以上、それに「自分の精一杯で応えたい」「応えなければいけない」とも考えていた。

 そのために、心がけたのはドイツ時代に培った、ピッチで"自分"をしっかり表現することだ。言葉でも、プレーでも、自分の考えは、常にはっきりと言葉に変え、それによる衝突も厭わなかった。

「海外では、自分がはっきりと考えを主張しないと、すべて自分のせいにされてしまいます。たとえば、パスを出した選手の精度が悪くても、『高徳が走れていないから(パスが)合わなかったんだ』というように。そこで、『どう見ても、お前のパスが悪かったんだろう』と主張しなければ、ひいては監督の評価を下げることにつながり、試合に出られなくなることだってある。

 僕はそれが嫌だったので、自分の考えは常にはっきりと主張することを心がけていたのですが、そうすると、たいてい言い合いになって、衝突するんです。でも、ぶつかるから会話をするようにもなり、互いを理解するようになって、より関係性を深めることもできた。それって、組織を作るうえですごく大事なことだと思います。

 もちろん、日本人は基本的に優しいし、組織やグループを大事に考えるのがいいところでもあると思いますが、勝負事は、勝つか、負けるかしかありません。であればこそ、ピッチ上で起きるいろんなことを曖昧にするべきではない。自分が思う『白』をはっきりと主張して、意見が違えば話し合って、自分が間違っていたなら変えればいい。

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