香川真司が始めた教室。人間力や言語化能力をサッカーから伸ばす方法とは? (6ページ目)

  • 木之下潤●取材・文 text by Kinoshita Jun
  • photo by Getty Images

 まさに忍者鬼ごっこを夢中でやっているうちに「こうしたらうまくいく」と工夫し、子どもたちが実際に表現して見せた一つの好事例だ。もう少し深く読み取ると、こんな解釈もできる。

 赤チームが「一人ずつ追いかける人を決めよう」と共通認識をつくり、それをもとにトライしたからこそ、4つの箱の中で16人が入り乱れた状態でエラーが起こったときに「この子はオレが見るから、そっちに逃げた子を見て」というアイディアを瞬間的に思いつき、プラスアルファの付加価値を生んだ。

 そして、この事象は見方を変えると好循環を生んだキッカケが、もう一つある。

 それは子どもが共通認識を言語化したことだ。これはHanaspoが狙う、サッカー以外にも可能性が広がる一つの能力開発でもある。自分の中で目の前の状況を分析し、その要点を言葉としてアウトプットする力は、サッカーが11対11のチームスポーツだからこそ育まれる力だ。きっと社会に入ってからビジネスの世界にも役立つ。

 たとえば、サッカー解説。目の前で起こった状況を要点化し、見ている人にわかりやすく伝える。これは「メシが食える大人を育てる」という高濱の、そして香川が共感した哲学に当てはまるはずだ。サッカーは常に状況が変わるスポーツなので、考え続けることが求められる。その本質を理解し、サッカー教育プログラムとして設計すれば、このように人間力を磨くことにつなげることができる。

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