イニエスタは「ピッチの創造主」。
同僚はあらためてすごさを思い知る

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

「ピッチの創造主」

 そんな表現は、大げさではない。

 後半13分には、イニエスタが再び魅せた。一度ボールをわずかに後ろに運ぶと、前へのスペースを空ける。そこに走り込んだ酒井高徳にすかさずスルーパス。その折り返しを、小川が難なく決めた。

 この3点目が入る前、まだ1点差だったジョホールは、不穏な動きを見せていた。しかし、この失点でつなぎ止めていた気持ちが切れたのだろう。勝負の趨勢は決まって、緩慢でラフな守備が目立つようになった。

 イニエスタも、ディフェンスの選手にかなり荒っぽい(足をかっさらうような)チャージを受けていた。プレー中、珍しくディフェンダーに対し、注意を促している。腹に据えかねたものがあったのか。

 その直後のペナルティエリア内、イニエスタは右サイドでボールを持つと、覇気を漲らせる。ゴールライン近くまで運ぶと、ノールックでファーにいたフリーの小川へ。GKまでも破る浮き玉で、あとは小川が押し込むだけのクロスだった。相手を叩きのめす、"お仕置き"プレーにも見えた。

 そして、意気消沈した相手にイニエスタは慈悲を与えない。自由にボールを受けると、古橋亨梧や藤本憲明に次々と決定機をお膳立て。息を吸って吐くほどに自然なプレーだった。

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