仙台のシマオ・マテが「日本のファンがベスト」
と言うのは根拠がある

  • 井川洋一●構成・文 text by Igawa Yoichi
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

「どうかな。(春頃の)自分の状態がそれほど悪かったとは思わないよ。試合に勝てなかったのは、相手が強かったからだ。たしかにその後は先発から外れたけれど、プロフェッショナルなら、機会を待たなければならない時もある。チームのメンバーを決めるのは監督だから、それに従うほかない」

 実戦のチャンスを待っている間、シマオは日本の生活に慣れていった。もとより日本食が好きな彼とその家族は、「刺身や寿司はもちろん、仙台の牛タンが大好物になった」という。6月に先発復帰してからの大活躍の要因には、生活への順応、そしてチームメイトの助けがあったはずだ。

「仲間には本当によくしてもらっている」とシマオは続ける。

「僕が6月の月間MVPを取れたのも、みんなのおかげだよ。チームメイトには心から感謝している。連敗から連勝に変わったタイミングが僕の先発復帰と重なっているから、6月の全勝の立役者みたいに言われたみたいだけど、それはたまたまだと思う。ちょうど、チームがまたハングリーになり始めたタイミングだった。なにも、僕がチームを蘇らせたわけじゃないよ」

 アフリカや欧州、アジアの数カ国を渡り歩いてきたシマオは、「サッカーはリスペクトのスポーツだ」と言い、常に周囲への敬意を忘れない。フットボールという職業、そしてツールを用いて世界を知り、各地で人々との友情を育んできた。

 そんなシマオはキャリアでもっとも長く生活したギリシャ(2007年から2012年までの5年間)に家を残しており、今でもたくさんの友だちに会うために、長い休暇になるたびに地中海へ赴いているという。

「僕がプレーしていた頃、経済危機はまだ起きていなかったから、ギリシャのリーグもスタンダードは高かった。とくに僕が所属していたパナシナイコスや、ライバルのオリンピアコス、PAOKといった上位陣は、チャンピオンズリーグでも健闘していた。対戦相手で、いちばんすごいと思ったのは、(当時)インテルのズラタン(・イブラヒモビッチ)だ。モンスターや、ビーストという形容がしっくりくる。僕はその後、スペインで(リオネル・)メッシやクリスティアーノ(・ロナウド)とも対戦したことがあるけど、もっとも衝撃的だったのはズラタンだ」

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