坪井慶介は引退してタレントの道を目指す。「大食いは巻に任せます」 (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki



 代表からは離れたが、坪井は40歳まで現役を続けることになる。そのモチベーションとなったのは、果たして何だったのだろうか。

「下手だったから、ですかね」

 坪井は、そういってほほ笑んだ。

「同い年に黄金世代と呼ばれる人たちがいましたから。彼らに負けないようにするためにはどうしたらいいかと言えば、練習するしかない。練習や準備、ケアをどれだけ彼らよりもやり続けられるか。

 その地道な作業にこだわってやってきたことが、長く続けられた一番の要因かなと思います。身近にうまい選手がたくさんいてくれて、本当によかったです」

 もちろん、その作業は地道でつらいものでもある。それこそ100%の準備をしても、成果として現れないことも珍しくはない。

「嫌だなと思う時もありましたよ。でも、どんな状況でも、試合に出ても、出られなくても、体調が悪くても、ケガをした時でも、そこだけはずっとやってきました。止めてしまったら、僕は終わってしまうと思っていたので。たぶん、変態なんですよ。変態じゃないと続けられないんです(笑)」

 引退後は、タレントの道を目指すという。

「メディア関係で仕事をしたいと思っています。ずっとサッカー選手をやって来たので、サッカーに関わる仕事が多くなるとは思いますけど、基本的には何でもやるつもりです。地方にロケに来てくれと言われたら、すぐに行きますよ。大食いは巻(誠一郎)に任せます(笑)」

 サッカーの世界にとどまらず、新たな道を歩む坪井にあるのは、チャレンジ精神に他ならない。

「40歳のおっさんが何を今さらって言われるかもしれないですけど、僕がレッズでデビューした時も、『坪井って誰?』って思われていたと思います。『いきなり試合に出て大丈夫?』って思われていた人間なので。それと同じような感覚で、すべての仕事に対して真摯に取り組んでいきたい。

 もちろん、うまくいくこともあれば、いかないこともたくさんあるでしょう。そこで考えて、勉強して、努力をすることが、自分にとってうれしいこと。今まで散々やって来たんですけどね、また自分を追い込むなんて、やっぱり変態なんですよ(笑)」

 無名の存在から這い上がって来た男は、スパイクを脱いでからも現役時代のように、ガムシャラにチャレンジし続けていく覚悟だ。


【profile】
坪井慶介(つぼい・けいすけ)
1979年9月16日生まれ、東京都多摩市出身。2002年、福岡大から浦和レッズに入団し、Jリーグ新人賞とフェアプレー賞を受賞。2003年には日本代表デビューを果たし、2006年のドイツW杯メンバーにも選出される。公式戦454試合、日本代表40試合出場。ポジション=DF。179cm、70kg。

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