2020.01.03

神戸の守護神・飯倉大樹は古巣との対決は「正直、やりたくない(笑)」

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 たしかに近年のヴィッセルは、親会社がスポンサーを務めるバルセロナをモデルにし、スペイン人選手や監督を招いてその手法を取り入れてきたが、今季もリーグ戦では不安定な戦いが続いていた。4月にフアン・マヌエル・リージョ監督と袂を分かち、6月にはトルステン・フィンク監督が就任。その後に酒井高徳とトーマス・フェルマーレンが加入してすぐさまチームに馴染んだこともあって、終盤戦は白星が先行するようになった。

 それでも日本屈指の戦力を有するクラブは、目に見える収穫を渇望していたはずだ。奇しくも敵軍の主将、内田篤人がこの試合後に「強くなって勝てる、ではなく、勝って強くなる。結果が先なんだよね」と話していたように。

「このチームにはタイトルが必要だった。本当に」と飯倉は7月に加入した神戸について話した。

「それが成功体験になっていく。頑張ること、体を張ることが、こうして結果につながれば、それが心や頭に残っていくから。決勝だから緊張するし、相手の鹿島は強い。でもそこを踏ん張って優勝できたのは、このクラブの財産になる。やっぱりこのクラブには、強いメンタリティーが必要だとすごく思っていた。最後まで、体を張って戦う。そんな当たり前のことが一番難しい。わかっていても、それをずっと集中してやりきるのが、本当に難しいんです。その意味で、こうしてゼロ(無失点)でタイトルを取れたのは、全員が同じ方向を向いて戦えたからだよね」

 そう語る33歳の守護神は昨夏、それまでのキャリアのすべてを捧げてきた横浜F・マリノスから神戸へ移籍(ロアッソ熊本へ期限付き移籍した2006年を除く)。古巣はその後、アンジェ・ポステコグルー監督が掲げるスピーディーで攻撃的なスタイルを突き詰め、15年ぶりのリーグ優勝を遂げた。おそらく飯倉の胸には複雑な想いがあったはずだが、自身もこうして、ピッチ上で初の主要タイトルを獲得できた(横浜FM時代の2013年天皇杯優勝はベンチ外)。

「最高の終わり方になりました。試合に出られなくて移籍を選択しましたけど、苦しい思いをしたなかで、神戸が新たな道をつくってくれ、最後に結果につながった。終わりよければすべてよし、ではないけど、本当にハッピーです。

(意地はあった?)それはすごくあったよね。(マリノスの優勝は)本当にうれしかったけど、天皇杯は自分が優勝したいと思っていた。うれしいことに、マリノスのリーグ優勝にはオレの貢献もあったと言ってくれるサポーターもいて。だから(神戸で)タイトルを取ってほしい、という声ももらっていたんです」