高校サッカー「関西のバルセロナ」興国はむしろマンチェスター・シティ (2ページ目)

  • 鈴木智之●取材・文 text by Suzuki Tomoyuki
  • photo by Suzuki Tomoyuki

 攻撃陣にはほかにも、興國の全校生徒のなかで足がいちばん速いと言われている、サイドMF南拓都。左サイドで違いを作るMF下村和輝。サンフレッチェ広島のジュニア時代から高い評価を受け、パスに定評のあるMF湯谷杏吏。そしてキャプテンの田路が、中盤を引き締める。

 最終ラインは攻撃センスに溢れる高安とDF橋本丈。センターバックでコンビを組むのは、プロ注目のツインタワー中島超男と平井駿助。GK田川知樹は、樺山とともに来年はJリーグ特別指定選手として活動予定で、驚異的なシュートストップとキックの精度は高校生レベルを超えている。

 各ポジションにタレントを擁する興國は、攻撃的なプレースタイルとユニフォームのカラーリングから「関西のバルセロナ」と呼ばれているが、今年のチームはバルセロナよりもマンチェスター・シティといった様相を呈している。

 欧州サッカーを参考にする内野智章監督も「バルサというよりも、(シティの監督の)ペップ(・グアルディオラ)ですよね。ボールを保持してサッカーをすることを目指しているので、ペップのサッカーは参考になります」と明かし、「樺山には『ケビン・デ・ブライネのポジションをとれ』と言っています」と話すように、ハーフスペースを使いながら両サイドの南や下村が絡み、杉浦が空けたスペースに樺山が入っていくなど、多彩なフィニッシュの形を持っている。

 また、GK田川は正確な左足のキックで攻撃の起点になれる選手で、プレースタイルはマンチェスター・シティのGKエデルソンと重なる。ボールを保持したいときは、センターバックの中島と平井にボランチの田路が加わってパスを回し、GK田川の正確なキックを起点にビルドアップしていく。高校サッカーではなかなか見ることのできないスタイルだ。

 初戦の相手、埼玉代表の昌平について、内野監督は「練習試合をしたことがないのでよくわからないですが、かなり強いと聞いています。選手権自体が初めてなので、火星に降り立って、まったく知らない火星人と試合をするみたいな感じですよ(笑)」と関西らしいユーモアで煙に巻くが、チームの仕上がりについては「大阪の決勝以降、攻撃に関してはだいぶ成熟してきた」と自信を覗かせる。

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