過去最多だった2019年J1の観客動員数。要因のひとつは明らかにイニエスタ

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 来季の川崎は、天皇杯決勝で鹿島アントラーズが優勝すればACL出場の扉が開くが、ヴィッセル神戸が優勝するとリーグ戦だけになる。もし彼らがリーグ戦だけになるようなら、来季は川崎が優勝争いの軸になるかもしれない。

 鹿島アントラーズは今季リーグ3位。終盤戦で息切れした印象だった。夏場に安西幸輝がポルティモネンセへ、安部裕葵がバルセロナへ、鈴木優磨がシント・トロイデンへ移籍し、故障者が続出したことも影響した面はあるだろう。安定感を欠いたことで勝ち点を取りこぼしたのが痛かった。若くてポテンシャルの高い選手が揃うチームだけに、来季もシーズン途中で若手が海外移籍する可能性はある。新体制でのさらなる戦力補強が、2016年シーズン以来のJリーグ王者の鍵になるのではないか。

 今季、想定以上のパフォーマンスを見せてくれたのは大分トリニータだ。開幕戦で鹿島を相手にサプライズを起こすと、夏場に藤本憲明を神戸に引き抜かれながらも、9位でフィニッシュ。片野坂知宏監督とはS級ライセンス取得の同期ということもあって、彼の手腕が評価されて優秀監督賞が贈られたことは、我がことのようにうれしかった。

 興味深いのが、J118クラブのなかで、大分がもっとも攻守の切り替えが少なかったというデータだ。世界のサッカーはインテンシティの高いスタイルが潮流になり、Jリーグでも優勝した横浜FMや川崎は、相手陣に攻め込んでいった時にボールを取られると、敵陣内で人数をかけてボールを奪い返して再び攻撃を仕掛ける。

 しかし、データが示す大分の戦いは、これとは真逆。自陣に相手を引き込んで、敵陣に広大なスペースを生み出したうえで、少ない手数で相手ゴールに迫る。選手の顔ぶれに合わせた戦い方の重要性もあらためて認識させてくれた。

 今季のJリーグ全試合の観客動員数は、総入場者数で過去最多の1140万1649人。J1の1試合平均入場者数は、2万751人。Jリーグ史上、初めて2万人の大台を突破した。際立つのがヴィッセル神戸の貢献度だ。神戸以外のクラブごとの入場者数ランキングを見れば、それぞれの1位か2位は神戸戦。アンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキ、ダビド・ビジャを擁する神戸が、Jリーグにもたらした好影響はとてつもなく大きかった。

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