過去最多だった2019年J1の観客動員数。要因のひとつは明らかにイニエスタ

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 この「フロント力」は来年以降のJリーグでは、すべてのクラブにとって、タイトル獲得に近づくための重要な要素になるだろう。日本の有望な若手は、ヨーロッパのシーズンが切り替わる夏場にチームから出てしまうことが多い。今季の横浜FMは夏場の移籍で天野純や三好康児がチームを去ったが、ここでしっかりした補強をしたことがシーズン終盤の好成績につながった。シーズン中の補強はただ獲得すればいいというものではないだけに、クラブのフロントの能力が問われる。

 横浜FMの優勝でターニングポイントになったのは間違いなく夏場だ。選手が数人抜けた影響で基本布陣を変えたことが、その後の快進撃につながった。トップやサイドで起用していたマルコス・ジュニオールを中央に配して司令塔的な役割を担わせたことや、1枚だった守備的MFは喜田拓也と扇原貴宏の2枚にしたことが奏功して守備の安定を生み出した。

 今季はチャレンジャーの立場で挑んだ横浜FMだが、来シーズンは相手に研究されるうえに、ACLの戦いもあるため過密スケジュールになる。ハードスケジュールに対応するために選手層を拡大する必要がある一方で、横浜FMの攻守一体のスタイルは、主要メンバーがひとり、ふたり変わるだけでチームのバランスが崩れる危険性も孕んでいる。そうした難しさに対して、ポステコグルー監督がどういう采配やチームマネジメントをするか注目していきたい。

 3連覇を目指した川崎フロンターレは、今季はリーグ4位に終わった。リーグ前半戦、勝ち切れずに勝ち点3を奪えなかった試合がいくつもあったことが最終的には響いた。

 川崎は選手個々の能力に頼るだけではなく、連動・連係で相手を崩して戦うスタイルだが、今季はメンバーを固定しきれない難しさを味わった。リーグ戦とACL、Jリーグカップ戦、天皇杯と試合数は多く、選手層に厚みを持たせることは避けられないなか、メンバーの組み合わせが増えた一方で、固定メンバーで戦ったときほどの連係力の高さは見られなかった。

 その理由には故障者の多さもある。中村憲剛、大島僚太、守田英正はケガに苦しんだ。そうした状況での田中碧の台頭があったとはいえ、彼に中村憲剛ほどの圧倒的な存在感はまだ望めない。中盤の構成力が弱まったこともあって、家長昭博も昨季のような輝きを放つことはできなかった。

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