選手時代に「所詮はJ2」と思った永井秀樹が監督になり痛感したこと (3ページ目)

  • 会津泰成●文・撮影 text&photo by Aizu Yasunari

7月の就任以降、永井秀樹監督とともに戦ってきたコーチ陣7月の就任以降、永井秀樹監督とともに戦ってきたコーチ陣―― 最終戦のあと、スピーチで具体的な来季の目標、「来季こそはJ1昇格」「優勝」というような言葉が出なかったことに対して、不満や物足りなさを覚えたサポーターもいたと聞きました。

 それは自分も聞いている。J1昇格や優勝を目指すという目標は、戦う以上クラブに関わる全員がそう思っていると信じている。誰も「2位か3位でいい」とは思っていないわけで、それならあえて言葉にする必要はないと思う。

「永井さんはロマンチストで、いいサッカーができればいい、勝ち負けはどうでもいいんだよね」と身近な人から言われたりもした。でも、それはまったく違う。自分は誰よりも負けず嫌い。もちろん、勝利を掴むために日々戦っているし、勝ち続けるためにはどうすればいいかを考えている。

 一方で、プロとしてお金をいただいてサッカーをしている以上、観客に感動や喜びを提供しなければいけない。「何でもいいから勝てばいい」というサッカーをして感動を与えられるのか? クラブとしてその先はあるか? たまたま、ヴェルディファンでもサッカーファンでもない人が、試合を観に来て「もう1回見たいね」と思ってもらえるようなサッカーを追求したい。そこのこだわりはこれからも変わらないし、たくさんの感動と勝利があるようなクラブ作りに貢献したい。

 尊敬するヨハン・クライフ氏は、かつて「美しく勝利せよ」と言った。「ぶざまに勝つくらいならば負けた方がいい」と。それは「美しいサッカーができれば負けてもいい」という意味とは違う。「ぶざまな戦い方で勝つくらいならば負けた方がましだ。だからこそ我々は理想のサッカーで、絶対に勝たなければいけない」という、強烈な勝利への執着心を表わしたメッセージだと自分は理解している。

―― シーズン中で苦しかった時期は?

 いつでもキツい(笑)。シーズンが終わった今も、キツさは何も変わらない。それを産みの苦しみと捉えて、やりがいと思えるかどうかだと思っている。

 レイソル戦のあと、恩師でもある名将のネルシーニョさんからは「永井はいい監督になれる才能を持っている。ただ、経験が足りない。これは、どの監督にも言えることだが、経験という道は、避けては通れない。永井のこれからの監督人生、私も楽しみにしているから、辛抱強く続けてください」と激励していただいた。それはものすごく励みになった。監督を続ける以上、苦しみがなくなることはないけど、苦しみをやり甲斐と捉えて、それが楽しみに変わる域まで、早く行けるように頑張りたい。

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