14年前の野洲高V経験者が目指す「セクシーフットボールの復権」 (2ページ目)

  • 鈴木智之●取材・文 text by Suzuki Tomoyuki
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 野洲高の選手がボールを持つと、四中工の選手が2人、3人で囲みに来る。四中工の樋口士郎監督(当時)は野洲対策を入念にし、この日を迎えていた。相手のとてつもない圧力を感じた青木は「これはヤバい。負けるかも」と思ったという。

 四中工に先制を許すと、その後もペースを握られてしまう。持ち味であるドリブル、パスワークが四中工のプレスの前に機能せず、時間が過ぎていく。そんな嫌な流れを断ち切ったのが、平原と青木のコンビプレーだった。

 前半終了間際、乾の横パスを受けた平原が、ワンタッチでスペースへパスを送る。そこに走り込んだ青木は迷うことなく左足を振り抜くと、強烈なシュートがゴールに吸い込まれていった。

 青木自身が「前半終了間際に同点に追いつけたのが大きかった。あのゴールで、自信を持って後半に入れましたから」と語る、価値ある同点ゴールだった。

 その後、乾が倒されて得たフリーキックを、金本が決めて勝ち越すと、再び同点に追いつかれた後、終了間際に青木にチャンスが回ってきた。同点ゴールと同じく、平原のスルーパスを受けた青木が、左足を強振する。シュートはGKの正面に飛んだが、こぼれ球を乾が押し込んでゴール。熱戦に終止符が打たれ、3-2で野洲高が四中工を下した。

 難敵を破った野洲は勢いに乗った。3回戦の高松商業には4-0。準々決勝の大阪朝鮮では、自陣から11本パスをつないでゴールを決めるという離れ業をやってのけ、1-1からPK戦の末に勝利。青木も2番手キッカーとしてゴールを決めた。

 舞台を国立競技場に移して行なわれた準決勝。相手は「練習試合で一度も負けていなかったので、負ける気がしなかった」という多々良学園。青木いわく「得点王になりたい気持ちが強すぎて、シュートミスばかり」という出来ながら、瀧川陽のゴールで1-0で勝利。ファイナルへの切符を手に入れた。

 決勝戦でダークホースの野洲を待ち構えるのは、全国優勝経験を持つ九州の雄・鹿児島実業である。

「鹿児島実業とは一回も試合をしたことがなかったし、決勝戦なので楽しくプレーできたら、結果はどっちでもいいという気持ちでピッチに立ちました」(青木)

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