2019.12.25

14年前のセクシーフットボール。
野洲高校が日本一になるまでの長い物語

  • 鈴木智之●取材・文 text by Suzuki Tomoyuki
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 野洲の攻撃は多彩だった。金本が長短自在のパスを操り、平原がピンポイントでスルーパスを通す。両ワイドの楠神と乾がドリブルで仕掛け、FWの青木は馬力あふれる突破で最終ラインを破り、スーパーサブの瀧川陽とともにゴールを量産した。

野洲高校のキャプテンとして、チームを引っ張っていた金本竜市(写真中央) 今でも動画サイトなどで当時のプレーを見ることができるが、「このサッカーを14年前の高校生がやっていたのか!」と驚きを禁じえない。技術、スピード、コンビネーション、そしてプレーのアイデアは、大げさな表現を許してもらえるならば、日本サッカーの歴史上、類を見ないものだ。

 野洲高のメンバーは滋賀県のジュニア、ジュニアユースクラブ『セゾンFC』出身の選手が多く、小中学生の頃から、岩谷篤人監督(当時)に、プレーで相手の逆をとることについて、厳しく指導をされていた。

「野洲高のコーチもされていた岩谷さんからは、相手の逆をとることと、みんなで同じイメージを描くことの大切さを、ずっと言われてきました。だから決勝戦のゴールも、みんなからすごいと言ってもらいますが、僕らからしたら鉄板の形というか、タカシはヒールで落とすやろうと思ったし、研がパスを出すのもイメージどおりですね」

 高校サッカー史上もっとも美しいゴールと呼ばれた、決勝戦の2点目。田中雄大のサイドチェンジを右の乾貴士が受け、ドリブルで中に進んで相手をひきつけて、ヒールで落とす。平原が縦に出したパスを中川真吾が中央に送り、ファーサイドに走り込んだ瀧川がダイレクトに蹴り込んだ。

 劇的な決勝ゴールだが、金本にとってはそれほど美しくはない思い出だという。

「決勝ゴールの話は、当時のチームメイトと集まっても全然出ないですね。ひょっとしたら、1回も出てないんちゃうかな? 理由は...僕や(青木)孝太とか、中心で引っ張ってきた選手が絡んでいないからじゃないですかね(笑)。それよりも準々決勝の大阪朝鮮との試合で、自陣から11本パスをつないで、相手に一回も触らせずに得点になったプレーがあったんです。それはみんなが絡んでいるので、よく話しに出ますね。『あのときのお前のパス、強かったよな(笑)』とか言って」