知性と覇気のストライカー、
ダビド・ビジャ。有終の美を飾れるか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by SportsPressJP/AFLO

 ビジャは、戦術的な知性が突出して高いストライカーだと言える。調和する能力が高い。最も理解し合っていたのが、"賢者"アンドレス・イニエスタで、スペイン代表、バルサ、そして神戸でお互いの力を引き出し合っている。

 しかし、ビジャがビジャたり得た理由は、やはり戦いにおける覇気にあった。

「信じられないほど、負けたあとのダビドは機嫌が悪いよ。負けた自分を許せないんだ」

 今季序盤、神戸を率いたフアン・マヌエル・リージョ監督が洩らしていたことがあった。その負けず嫌いは、少年時代から変わっていない。

「ダビドは試合に負けて泣いたことなどない。いつも怒っていたよ。ゴールを外してもそうだ。とても機嫌が悪くなった。あいつにとっては、ゴールして勝つことが人生そのものなんだ」

 かつて、生まれ故郷のトゥイージャを取材した時、父親メルから聞いた言葉である。

 ビジャはひたすら勝つために、ゴールする技術を修練してきたのだろう。両足でシュートを打て、振りが速いだけでない。ステップも細かいため、GKにタイミングを読ませない。

 なにより、シュートまで持ち込む形を無数に持っている。右でも左でもヘディングでも、クロスでもミドルでも、FKでもPKでも。今シーズンのJ1で、ビジャのシュート本数は、二桁以上ゴールを記録した選手の中で最多だ。

 ビジャは、誰よりも雄々しい選手と言える。ストライカーとして、ゴールを決める任務に背を向けたことがない。その使命を果たすことが、彼の人生だった。どのチームに行っても、ゴールの山を築いており、おかげでチームは栄光に浴したのだ。

 バルサからアトレティコ・マドリードへ移籍し、「落ち目」とささやかれた時でさえそうだった。アトレティコでも見事、二桁得点を記録。リーガ・エスパニョーラ優勝をもたらしているのだ。

 スペイン代表としても、ビジャはゴールで時代を作った。ユーロ2008、南アフリカワールドカップで得点王に輝き、そのどちらの大会も優勝を飾っている。ラウル・ゴンサレス、フェルナンド・トーレスを抑えてスペイン代表歴代最多得点を誇るだけでなく、誰よりも多くのタイトルを獲った選手である。

 はたして、ビジャはゴールで有終の美を飾れるのか――。12月21日、神戸は天皇杯準決勝で清水エスパルスと対戦。元日には、こけら落としとなる新国立競技場で決勝戦が予定されている。



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