青森山田、選手権連覇へ吉兆。
最強・名古屋を下しユース年代の頂点に

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 その後は、本来のリズムで取り戻した名古屋が攻勢に試合を進め、前半のうちに1点を返すと、後半の14分には連続攻撃から左サイドを破り、一度は同点に追いついた。

 ユース年代屈指の攻撃力はさすが。やはり、勝つのは名古屋なのか。会場の埼玉スタジアムに、そんな雰囲気が漂い始めた矢先だった。

 2点をリードされながら、ようやく追いついた名古屋の選手たちに、少なからずホッと安堵する気持ちが生まれたとしても不思議ではない。よし、これでイケると、一息ついた、その瞬間を青森山田は見逃さなかった。黒田監督が語る。

「後半、少し間延びしたところで裏を突かれて失点したが、2-2はあると想定していた。ハーフタイムには、追いつかれても雰囲気に飲まれないよう、自分たちのサッカーをやろうと話した」

 青森山田の決勝点が生まれたのは、後半17分。つまり、名古屋の同点ゴールのわずか3分後のことだった。

 青森山田のMF古宿理久(ふるやど・りく)が左サイドの裏を狙って、浮き球のパスを送るも、名古屋DFが難なくカット。しかし、名古屋の中盤の帰陣が遅れる一方で、このセカンドボールにいち早く反応していたのが、青森山田のMF松木玖生(まつき・くりゅう)だった。

 こぼれ球を拾った松木は、そのままドリブルで中央へ入っていくと、右足でのシュートをちらつかせながら、鋭い切り返しから左足をひと振り。ボールはDFの股間をくぐり、GKの右脇をすり抜け、ゴール右隅に転がり込んだ。

 結局、試合はこのまま、青森山田の1点リードで終了。名古屋は終盤、猛攻を仕掛けるも、そこには少なからず焦りがまじり、いたずらに中央の狭いエリアへ突っ込んでいくばかりで、なかなか決定機には至らなかった。殊勲の決勝ゴールを決めた1年生、松木が笑顔で語る。

「(青森山田は)全員がハードワークして、『絶対に勝てる!』という気持ちが強いチームです」

 試合巧者の青森山田は、ここが勝負どころというポイントをしっかり押さえ、地力に勝る名古屋を出し抜いた。そんな印象の試合だった。

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