横浜F・マリノスの陰のMVP。攻撃サッカーはこのCBあってこそだ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 攻撃的サッカーの真髄は、むしろそこに潜んでいた。主役はセンターバック(CB)の2人。畠中槙之輔とチアゴ・マルチンスになる。日本代表中心主義に基づけば、このところ代表に呼ばれ続けている畠中にまず目は向く。確かに彼は、この1年で急成長した。しかし、それは脇にチアゴ・マルチンスが構えていたからではないだろうか。それぐらい、このブラジル人CBは優秀だった。

 185cm76kg。ハードなストッパータイプではない。独特のステップワークと、滑らかな素早い動きで、敵の背後への進入を防ぐ、技と頭脳でボールを奪う知性に富むCBだ。ブラジル代表歴はないとのことだが、チャンピオンズリーグの上位クラブからいつ誘われても不思議はない、文字どおりの実力派である。

 もし彼がいなかったら、横浜FMは攻撃的サッカーに没頭できただろうか。自慢のアタッカー陣は活躍できただろうか。チームから最も欠けてほしくない選手は誰かという視点で最優秀選手を選ぶとすれば、仲川ではなくこのチアゴ・マルチンスになる。横浜FMは今季、失点が38あるが、このブラジル人CBがいなければ、失点の数は大幅に増えていたに違いない。おのずと、その攻撃的サッカーは粗野なものになっていたはずで、優勝争いさえ難しかったのではないかと推測される。

 イニエスタはともかく、知名度が低い実力派の外国人選手をないがしろにすべきではない。そんな意味も含めて、筆者はあえてチアゴ・マルチンスを最優秀選手に推すことにしたい。




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