横浜FMに欠かせなかった2つのピース。特異なスタイルを完成させた (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 ところが今季は、総得点では昨季から10点以上も上乗せし、リーグトップの68点を積み上げた一方で、総失点は38と昨季から20点近く減らしている。

 とくに10勝1分けという怒涛のラストスパートを見せた最後の11試合では、総得点31という数字もさることながら、総失点を8まで減らしている。1試合平均に換算すると、それ以前の23試合がおよそ1.3失点であるのに対し、最後の11試合はおよそ0.7失点。ほぼ半減しているのがわかる。

 では、なぜ横浜FMは、これほど大幅に失点を減らすことができたのか。

 最大の要因は、攻撃時のバランスがよくなったことだろう。畠中は「去年はあまり試合に出ていないので、(去年と)比べるのは難しいが」としたうえで、こう語る。

「(攻撃時の味方同士の)距離感が近くなって、(ボールを)取られてもすぐにプレスをかけて奪い返すことができていた」

 横浜FMでは、高い位置を取るDFラインの背後をカバーするため、あるいは、攻撃のビルドアップに加わるため、GKもペナルティーエリアの外まで出てプレーすることが求められる。だが、昨季はそのポジショニングがあだとなり、中盤でボールを失った瞬間、がら空きになったゴールめがけて、ロングシュートを狙われるシーンが多かった。

 中盤でのボールの失い方が悪く、すぐに守備に切り替えてプレスをかけることができなかったからである。

 しかし今季は、攻撃時のポジショニングがよくなったことで、効果的なパスがつながるようになったばかりか、それが、結果的に守備力を高めることにもつながった。チアゴ・マルチンスは言う。

「後ろの選手は、前の選手がいい形で攻撃に移れるように協力するし、ディフェンスも前の選手からのプレスで始まる。DFラインを高く上げ、コンパクトにすれば、(攻守両面で)全員が長い距離を走らなくて済む」

 しかも、その練度は試合を重ねるごとに高まり、シーズン終盤では攻守に相手を圧倒する試合を続けた。チアゴ・マルチンスが誇らしげに続ける。

「日々の練習から、全員が努力を惜しまず走って作り上げてきたやり方が、試合に表れている」

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