アルディージャ「笛吹けど踊らず」完敗。悪しき習慣を変えられなかった (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 ただ、大宮の高木監督も70分にダヴィッド・バブンスキーを起用し、引き続き攻撃の活性化を狙う選手交代策を打った。しかし、その直後の73分、山形が得意とするコーナーキックから大宮のイッペイ・シノズカが痛恨のオウンゴール。これにより、先手を打ったはずの交代策は裏目と出た。

 あとがない大宮ベンチは、79分にボランチの石川俊輝を下げて切り札の大前元紀を前線に投入。茨田陽生を一列下げて、より攻撃的な態勢でゴールを目指した。だが、またしてもその目論見は打ち砕かれる。

 3枚目のカードを切った直後の82分、山形はこの試合で最も輝いていた坂元のパスが起点となり、右から左へと展開。最後は山岸がネットを揺らして追加点を奪った。山形はとどめの2ゴール目を決め、2回戦進出を確定させることに成功したのである。

 結果的に高木監督の采配は裏目に出たわけだが、プランどおり攻撃的に戦えなかった前半戦のパフォーマンスを見れば、山形ベンチよりも先に動かざるを得なかったのは仕方のないところ。それよりも、シーズン終盤の失速を含め、肝心なところで星を落としてしまう悪しき習慣を最後まで変えられなかったチームマネジメント自体を反省すべきだろう。

 なぜ、笛を吹いても選手は踊らなかったのか――。この試合だけを切り取れば典型的なプレーオフの下克上ゲームだが、結局は大宮の抱えていた問題点があらためて浮き彫りになったのが、この敗戦だったといえる。

「今シーズンを通して考えてみても、自分たちがボールを握って相手が嫌なことを仕掛けることはできていなかったので、こういうプレッシャーのかかったなか、やっぱりそれはできなかった。それが最後の最後でも出てしまった」

 試合後の茨田のコメントが敗因を集約していた。さらにいえば、石井正忠前監督のもとで臨んだ昨季のJ1参入プレーオフ1回戦での敗戦を生かすことができなかったことも、チームとして大いに反省しなければならない。

 財政規模、選手層、経験と、あらゆる面でJ1昇格が義務づけられる大宮が乗り越えなければならない大きな壁。それが明確になったこの敗戦を、今度こそ教訓として生かすことができるか。来季はクラブとして真価が問われるシーズンになる。

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