初Vが厳しくなったFC東京。
だが戦い方の確立は選手を成長させた

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

「15~20分までは、相手が前からプレスにきたことで取られたりもしましたが、この飛ばし方では、(90分は)続かないと思っていたので。選手が落ち着いてやってくれました」(浦和・大槻毅監督)

 それでも優勢なのはFC東京だったが、30分を過ぎてアクシデントが起きた。チーム最多得点のオリヴェイラが接触プレーで足を痛め、ピッチに倒れる。思った以上に長い時間の治療で、顔をゆがめたままピッチに戻るが、足を引きずる様子で、プレーできる状態ではなかった。欠かせないエースだが、明らかに交代の判断は遅れた。

 これで浦和が流れをつかむ。FC東京陣内にどっと攻め入り、右サイドを深く破る。その流れで得た右CKだった。ショートコーナーから山中亮輔が左足で狙い、GK林彰洋にブロックされたものの、エリア内にこぼれたボールをマルティノスが押し込んだ。

 FC東京は一瞬のスキを突かれた。マルティノスのマーカーはオリヴェイラだった。このあと、オリヴェイラは無念さか、涙を流してピッチを去っている。

 ただ、FC東京は先制点もエースも失いながら、優勝争いを続けてきた地力を示す。

「失点で、自分たちがネガティブになることはなかったです。ハーフタイムには、『まずは1点返そう』と言っていました。自分たちのやり方でチャンスは作ることができていたので......」(FC東京・橋本)

 後半、FC東京は永井も負傷で失ったが、怯んではいない。室屋が果敢に右サイドを攻め上がり、橋本がエリア外から飛び込み、ヘディングで狙う。浦和のシュートを2本に抑え、自らは7本も打っているのだ。

 69分だった。左CKから森重真人がシュートしたこぼれをナ・サンホが打ち、これはGK西川の好守に止められたものの、さらにこぼれ球を途中出場の田川亨介が叩き込んだ。

「途中で入る時には、何ができるかは考えていて、今日は(得点が必要で)イケイケだったので、入りやすかったです」(FC東京・田川)

 FC東京はどうにか追いついた。しかし、消耗も激しかったか。無理をしない浦和を攻め崩せるだけの余力は残っていなかった。今季前半戦、MVPに近い活躍を見せた近い久保のように、一瞬で流れを変えられる選手も欠いていた。

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