昨季の王者、川崎のボール支配率が低下した要因はサイドにあり (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 昨季まで川崎の右SBのポジションはリーグ最強と言われ、2年連続ベストイレブンに輝いたエウシーニョが、デンと構えていた。川崎の2連覇に貢献したこの選手を手放した(清水エスパルスに移籍)ことと、リーグ3連覇がほぼ絶望になったことには、密接な関係があると言わざるを得ない。

 川崎は、右SBの前方で構える左利きの家長昭博が内へ切れ込む傾向が強く、エウシーニョがいた時から、右のサイド攻撃は右SBに頼っていた。縦への推進力が求められたわけだが、マギーニョにその役は務まらなかった。馬渡も同様だ。家長がプレースタイルを変えることもなかったので、エウシーニョの放出は、そのまま右からの攻撃を弱体化させることになった。

 サイド攻撃が弱体化すると、どのような現象が起きるか。なによりボール支配率の低下を招く。サイドは相手が片側からしかプレッシャーをかけることができないので、四方からプレッシャーをかけられる真ん中に比べ、ボールを失いにくい性質がある。

 川崎の場合、大島僚太、中村憲剛を中心に、真ん中にも優秀な人材がいるので、高いボール支配率を示す原因が、サイドに潜んでいるようには見えにくい。真ん中でパスがつながることにその原因があるように見えるが、それは充実したサイド攻撃あっての話なのだ。

 ボール支配率が40%にしか達しなかったこの広島戦がいい例だ。この試合、エウシーニョと同じく昨季まで2年連続ベスト11に輝いた車屋紳太郎が累積警告で欠場。また4-2-3-1の3の右で構える家長も欠いていた。サイドで構える役者を、昨季との比較で、計3人欠いていたことになる。

 川崎の今季のボール支配率が、例年を2、3%下回る平均54%台にとどまっている原因は、エウシーニョの穴にあることは明白なのだ。

 ボール支配率で今季、ダントツの首位をいく横浜FM(62%)と比較すればわかりやすい。こちらは両ウイングが開き気味に構え、両SBが絞り気味に構える特徴を持つが、Jリーグで最もサイド攻撃を追求しているチームだ。支配率の高さのみならず、そのパスワークが光るのも、サイド攻撃が充実しているからに他ならない。エウシーニョを失った川崎は、成績のみならず、それまで譲らなかった魅力でも、他のチームに劣ることになってしまったのだ。

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