2019.10.16

高校サッカーで奮闘。社会の厳しさを知る
元Jリーガー監督の過酷な現実

  • 森田将義●取材・文 text by Morita Masayoshi
  • photo by Morita Masayoshi

 取り組みは結果としてすぐに表われた。新生・近江高校サッカー部として活動が始まった2016年度の選手権予選は初戦敗退で終わったが、2年目の2017年度は1、2年生のみのメンバー構成ながらも、インターハイ予選を勝ち抜き初の全国出場を達成。3学年が揃い勝負の年ととらえていた昨年は、選手権予選のベスト8で涙を呑んだが、もう一つのターゲットだったプリンスリーグ関西への昇格は果たした。

近江高校で指導する元Jリーガー、前田高孝監督 強化開始からわずか4年で関西の強豪校と肩を並べたが、待っていたのは過酷な現実だ。プリンスリーグ関西は開幕から善戦を続けるものの白星は遠く、初勝利を奪ったのはリーグの折り返しを迎えた7月の第9節。指導者に転身してからは一定の成果を挙げてきたため、前田監督は「こんなに毎週負けたことがなかったから、試合をするのが嫌だった」と振り返る。

 ただし、勝てない中でもがき続けることで、心境の変化も生まれた。

「負けると自分に腹が立つし、凹む。でも、相手もしっかり練習して挑んでくるから、勝つか負けるかはわからない。一生懸命やっても負ける時もあるんだと学んだ」

 チームを強くしたい一心で勝ちにこだわっていた以前とは違い、負けを素直に受け入れられるようになってからは気持ちが楽になった。これまで試合を見るのは高校サッカーばかり。分析のために行なうチェックが主体だったため、「楽しんでサッカーを見られなかった」が、今年に入ってからは気楽な気持ちでプレミアリーグやチャンピオンズリーグを観戦できるようになった。

 悲願である選手権初出場がかかった予選を前にしても、張り詰めた様子は見られない。良い意味での心の余裕が生まれたのは、指導者としての成長と言えるだろう。

 選手としての経験を評価され、今後も各地で元Jリーガー監督は増えていくのは間違いない。これから本格化する選手権予選では、選手の奮闘と共に、指導者としてのキャリアを歩み始めた元Jリーガーたちの奮闘と葛藤にも注目してほしい。

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