ブレない横浜F・マリノス。タイトル奪取の現実味が一気に増した (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Kyodo News

 出し手の松原が「意思の疎通ができているから、裏を取れる。(自分が)顔を上げた瞬間に(仲川が)動き出してくれた」と言えば、受け手の仲川も、「健とのコンビネーションは、去年から続けていること。それがいい形で表われた。あれは狙っているところだし、阿吽の呼吸に近い」と自画自賛。

 結果的に、最後は仲川の中央へのパスが相手DFに当たってのオウンゴールとなったが、一連の組み立ては、「これぞ、F・マリノス!」と拍手を送りたくなる流麗な攻撃だった。

 仲川が、「あそこで1点取れたことで、(試合が)自分たちのペースになり、優位に立てたのかな」と話したように、このゴールが試合の流れを変えた。

「ガマンしていれば、自分たちのペースになるという共通理解ができている。失点さえしなければ、(いつか)点が取れるという自信がある」

 ボランチのMF扇原貴宏はそう語っていたが、その言葉が決して不遜には聞こえないほどに、横浜FMの攻撃は試合を重ねるごとに精度が高まり、威力を増している印象だ。

 だが、これまでに積み上げてきたものが発揮された、という意味で言えば、仲川が「狙いどおり」と胸を張った後半42分の追加点のほうが、より「F・マリノスらしい」ゴールと言えるのかもしれない。

 横浜FMは、自陣左サイドで奪ったボールをうまくつないで前線まで運ぶと、交代出場のDF高野遼が右サイドへ大きくサイドチェンジ。このパスを受けた仲川は、ペナルティーエリア内でドリブルを仕掛けると見せかけ、少しボールの位置をずらしてシュートコースを作ると、目の前の相手選手を抜き切ることなく、右足をコンパクトに振ってシュート。決して強いシュートではなかったが、これがきれいに左サイドネットに収まった。2ゴールに絡んだ仲川が語る。

「ああいうときは、チームとして『ファーサイドに打て』と言われている。(シュートがゴールの)枠をズレても味方が触ればゴールになるし、(自分が決めたように)逆サイドネットに入ることもあるから」

 チームとして徹底してやり続けてきたことが、大事な場面で形になった。まさに、そんなゴールだったわけだ。

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