FWジェイの本心。「イニエスタがいても
勝てない。Jリーグは甘くない」

  • 井川洋一●構成・文 text by Igawa Yoichi
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 翌日に指定されたホテルへ行くと、主将のスティーブン・ジェラードがチームメイト全員を紹介し、彼やリオ・ファーディナンドがいろいろと面倒を見てくれた。ただし、彼を選出したカペッロ監督には、圧倒されたという。

「想像よりも体つきは小さかった。でもオーラがにじみ出ていて、存在感は絶大だった。ミーティングの時に監督が入ってくると、それまでしゃべっていた選手たちも途端に口を閉じたよ。最初の食事の時、僕はサンダルで向かおうとしたんだけど、ジェラードがやってきて、『監督はそういう格好が好きじゃないから、すぐにスニーカーに履き替えてくるんだ』と教えてくれた。あのまま向かっていたら、厄介なことになっていたかもしれないね」

 フランスとのフレンドリーマッチでは、後半途中に投入され、記念すべき1キャップが刻まれた。28歳での代表初出場──それは、気持ちを入れ替えて取り組んできたことの成果だとジェイは語る。

「若いころからプロになることを志していたけど、そのころの僕の練習態度やモチベーションは、必ずしもすばらしかったわけではない。今考えると、自分の才能を無駄にしかけていた。僕もそうだったけど、若い選手はいつまでもフットボールを続けられると考えがちだ。でも実際は違う。プロのフットボーラーのキャリアは短い。

 だから日々を、その瞬間の一つひとつを最大限に生かさなければ、大成できないんだ。周りにもそういう選手はいて、手遅れになってしまうケースも少なくない。幸いにも僕は20代前半で気づき、そこから短期と長期の目標を明確にし、着実にステップを重ねたんだ。そして、プレミアリーグやイングランド代表に到達できた。代表選手になって、自分のやり方が間違っていなかったと証明されたので、余計にうれしかったよ」

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