イニエスタ復帰で本領発揮。神戸の
豪華な「点」が「線」になってきた

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 phoot by Yamazoe Toshio

 ビジャの決定力は抜きん出ていた。左右両足でシュートを決められ、モーションが小さく、タイミングもコースも読ませない。GKはどうしようもないのだ。

 ワールドクラスの違いが出たのは、得点シーンだけではない。たとえばフェルマーレンは、昨シーズンのJリーグMVP家長昭博から簡単にボールを奪い去っていた。フェルマーレンは酒井、イニエスタと連携して左サイドを安定させ、右サイドの攻撃を活性化させていた。点と点で勝利し、線につなげていたのだ。

 そして後半には、イニエスタが"輝く線を引く"。70分、コーナーキックの流れからの再攻撃、左サイドからファーポストのフェルマーレンの頭にぴたりと合わせる。その折り返しに大崎玲央が飛び込み、押し込んだ。

「アンドレス(イニエスタ)が出ると、やはり存在感が違う。いるだけで、周りの選手が安心してプレーできる。たとえ100%の状態でなくても、とても心強い。2点目をセットアップしたのも彼だった」(神戸/トルステン・フィンク監督)

 イニエスタのクロスは、まさに試合前の練習どおりだった。この夜、それが決め手になることを予期していたような前振り。神がかった芸当の理由は、単純な練習の中にあるのか。コンディションは50%程度だが、それでも試合を決めることができる。

 神戸は2-0で余裕ができた。その後、川崎が元ブラジル代表FWレアンドロ・ダミアンを投入したことで混乱し、1点を失ったものの、最後は逃げ切っている。

「2試合、ケガで休むことになって。久しぶりの試合は難しいところもあるが、いいフィーリングでプレーできた。何より、勝利がチームに自信をもたらす」

 試合後の会見で、イニエスタは淡々と言った。勝利を喜んでいたが、緩みは見えない。「残留争いに向けて(貴重な)勝ち点3だったのでは?」という質問には表情を動かさなかった。その視線は上にしか向いていないのだ。

「まずは3連勝しよう!」

 イニエスタは、チームメイトにそう声をかけていた。

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