大量失点を教訓にするエスパルス。J1残留へ6得点も油断ゼロだった (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 局面の争いで負けず、チャンスメイクに奔走し、この日のように自らゴールも陥落する。このスーパーなタレントを王者から引き抜いたのは、今季の清水の最大のヒットと言えるだろう。

 もうひとり、清水にはドウグラスという重要人物が存在する。昨季途中に加入し、15試合で11ゴールを記録したストライカーは、今季は体調不良により出遅れるアクシデントに見舞われた。

 しかし、篠田体制に代わって以降はコンスタントに得点を記録。湘南戦でも1得点・1アシストと、エースとしての役割を全うしている。

 また、得点のみならず、ポストワークも完璧で、対峙した湘南のCB坂圭祐を完全に翻弄した。この日の清水は2列目以降の飛び出しが攻撃に厚みを生み出していたが、そのプレーを実現できたのも、ドウグラスのポストワークがあったからだろう。

 このふたりに加え、ボランチを務めるヘナト・アウグストも、試合を重ねるごとにフィットし、今では欠かせない存在となっている。湘南戦では負傷により早々に交代するアクシデントに見舞われたが、清水はリーグでもトップクラスの"助っ人力"を備えていることは間違いない。

 さらに清水には、新たなタレントの台頭が促されている。左サイドMFを務める23歳の西澤健太だ。

 筑波大から今季加入したルーキーは、6月以降にスタメンに定着。高い技術と正確なキックが武器のチャンスメーカーだが、ここへきて得点力が飛躍的に向上してきた。前節の名古屋グランパス戦で2ゴールを奪うと、湘南戦でも2ゴール。2試合で4得点の荒稼ぎで、チームの2連勝に貢献した。

 本人は「アシストをもっと増やしたい」と言うが、今季16試合で7得点と、アタッカーとして十分な能力を示す。今夏に欧州に旅立った北川航也(ラピード・ウィーン)の穴を埋める活躍ぶりだろう。

 スタートのつまずきもあり、今季は低空飛行を続けてきた。だが、湘南との直接対決を制して10位に浮上。プレーオフに回る16位のサガン鳥栖との勝ち点差は7ポイントに広がり、残留争いから一歩抜け出した印象だ。

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