大量失点を教訓にするエスパルス。
J1残留へ6得点も油断ゼロだった

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 両者の勝ち点差は、わずかに1。その順位を考えれば、敗れたほうが残留争いに巻き込まれる、いわば「崖っぷち」の戦いだった。

 そのため、お互いに1点を与えない手堅い展開となることが予想されたが、それに反して試合はよもやの大差がついた。勝ったのはアウェーの清水エスパルスである。J1ではクラブ史上最多に並ぶ6得点を叩き込み、ホームの湘南ベルマーレを一蹴した。

2試合連続で2ゴールを決めた西澤健太2試合連続で2ゴールを決めた西澤健太 立ち上がりこそ互角の展開も、25分の先制点を皮切りに、両者の均衡が崩れた。勢いに乗った清水が積極性を打ち出したのに対し、湘南の守備組織はあっけなく崩壊。前半終了間際に立て続けに3得点を奪った清水は、後半立ち上がりにも2点を追加した。

 その意味で大きかったのは、やはり先制点だった。決めたのは右サイドバックのエウシーニョだ。果敢なオーバーラップを繰り返し、右サイドを攻略。力強いドリブルで中に切れ込むと、味方からのリターンを受け、豪快にネットを揺らした。

 さらにエウシーニョは43分にも、同様の形から追加点をマーク。まるでストライカーのような働きを示し、大勝の立役者となった。

「自分の好きなプレーができた」と振り返るブラジル人DFは、今季川崎フロンターレから加入。リーグ連覇に貢献した実力を、清水でもいかんなく発揮している。

 その存在感は、彼が出場した時と不在時の勝率にも見出せる。第21節以降の7試合で、出場した4試合はすべて勝利。逆に欠場した3試合は1分2敗。0-8と歴史的な大敗を喫した第23節の北海道コンサドーレ札幌戦でも、エウシーニョはピッチに立っていなかった。

 2年目を迎えたヤン・ヨンソン監督のもとで、今季の清水はカウンター型からポゼッション型への転換を目指していた。しかし、その狙いは早々に頓挫し、開幕11試合でわずか2勝。第11節に川崎に0-4と完敗を喫すると、ヤン・ヨンソン体制は崩壊した。

 第12節から指揮を執る篠田善之監督は、攻守の切り替えの速さやインテンシティをチームに求めている。そのスタイルにおいて、右サイドで攻守にハードワークできるエウシーニョは不可欠な存在だ。

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