札幌の37歳FWジェイはなぜ日本へ?「以前よりいい人間になった」 (2ページ目)

  • 井川洋一●構成・文 text by Igawa Yoichi
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 日本での最初の所属先は、当時J2に所属していたジュビロ磐田だった。決断の理由は何だったのだろうか。

「(2012年に当時プレミアリーグの)クイーンズ・パーク・レンジャーズでプレーしていたころ、プレシーズンの遠征でマレーシアへ行ったんだ。その時、初めてアジアのフットボールに触れ、好印象を抱いた。ファンは熱心にチームを応援し、フットボールのことを深く知ろうとしているように見えた。スタジアムやトレーニング場も、予想を上回るものだったよ。だからそのうち、アジアでプレーするのもいいだろうなと思い始めたんだ」

 そして2014年にはタイの強豪ムアントン・ユナイテッドに加入。だがそこはいろいろなことがあまりにも緩すぎて、馴染めなかったという。

「リーグもクラブもオーガナイズされていないんだ。プレーのレベルも低くてね。だからクラブには正直に思いを打ち明けて、次のシーズンにチャンスがあれば出たいと言った。そしてオフにジュビロと契約したというわけさ」

 日本でも最初は戸惑いもあった。たとえば日々の生活のなかで、"あそびの少なさ"のようなものを感じていた。

「ささいなことだけど」とジェイは言う。「たとえばロンドンでは、買い物に行ったとき、支払いに小銭がちょっと足りなかったとしても、だいたいおまけしてもらえたりする。でも、日本のコンビニやスーパーマーケットではそうはいかない。それからレストランで、何かを抜いてほしいとリクエストしても聞いてもらえた試しがない。メニューにあるとおりです、と繰り返すんだ。日本にはおいしいものはとても多いけれど、あまり融通はきかないよね」

 ロンドン生まれの菜食主義のアスリートがさまざまな場面で面食らった姿は、容易に想像できる。それでもイタリアのペルージャや、ウェールズのカーディフでもプレーした彼は、日本にも「段階を踏んで」順応していった──実際、ヨーロッパにいたころは完全なるビーガン(野菜以外は一切食べない)だったが、日本では前述のように店の対応が難しいため、今は「肉を取らないようにする」くらいの対応になった。

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