ブラジル人記者が見た鹿島の強さ。
ACL敗退もジーコはチームを誇った

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 世界中のほとんどの人は鹿島がどこにあるのかを知らないだろう。しかし、アジア最強のチームが鹿島アントラーズであることは、多くの者が知っている。2019年9月18日までは......。

 この日、アントラーズはホームに広州恒大を迎えた。ACL(アジアチャンピオンズリーグ)準々決勝の2戦目。戦術的に最も優れた秩序を持つチームと、潤沢な資金を持った強靭なチームの戦いだ。1戦目の広州で行なわれた試合はスコアレスドローだったため、鹿島が準決勝に駒を進めるにはどうしても勝たなければいけなかった。しかし、結果は1-1の引き分けに終わり、鹿島は敗退した。

 広州恒大の前にACLで敗退した鹿島アントラーズ photo by Etsuo Hara/Getty Images 広州恒大の前にACLで敗退した鹿島アントラーズ photo by Etsuo Hara/Getty Images この夜、より優れたパフォーマンスを見せたのは鹿島の方だったし、MVPに選ばれたのは鹿島のレオ・シルバだった。シュート数も広州の6に対して鹿島は16と10本も多く、ボールポゼッションは鹿島の60%に対して広州が40%だった。

 ブラジル人にとって最も重要なデータは、まずゴール枠に飛んだシュート数、その次に正確なパスの数となる。この日の鹿島のパス成功率はなんと80%、広州は73%だった。つまり鹿島はすべての数字において広州恒大を凌駕していた。広州が唯一、鹿島を上回っていたのはファウルの数だけ。しかし、それもうなずける。鹿島を止める方法はファウルしかなかったのだ。この夜、なぜ鹿島がアジアサッカーの雄と呼ばれているのかを、私は目の当たりにした。

 鹿島スタジアムには、世界のサッカーの歴史を作ってきた2人の人物がいた。1人はベンチに、そしてもう1人はスタンドに。

 ファビオ・カンナバーロは、彼が率いる広州恒大の準決勝進出が決まった後、こう語った。

「鹿島は掛け値なく今日のアジアで一番強いチームのひとつで、この鹿島対広州は、事実上の決勝だった。90分のハードな戦いを勝ち抜けたことは、我々に大きなエネルギーを与えてくれる。この先、最後の最後まで進んでいく自信を持つことができた」

 広州の、事実上の決勝ゴールを決めたアンデルソン・タリスカは、ヨーロッパの多くのクラブがほしがるほどの選手だ。彼はこの試合をこう振り返った。

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