橋岡大樹が放ったインパクト。
20歳の反骨心が低迷レッズを救う

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 ACL決勝トーナメント準々決勝――。敵地での第1戦を2-2で引き分けていた浦和レッズにとって、ホームで行なわれる第2戦は、上海上港に勝てばもちろん、0-0、もしくは1-1のドローでも、勝ち上がりが決まる状況だった。

 逆に敗戦、あるいは3得点以上でのタイスコアであれば、敗退となる。その条件を踏まえれば、手堅く試合に入り、ロースコアの展開に持ち込むことが得策と思えた。

右サイドで輝きを放った20歳の橋岡大樹右サイドで輝きを放った20歳の橋岡大樹 しかし、試合前に大槻毅監督が選手たちに求めたのは、「前に出ること」だった。

 受け身にならず、積極性を示し、主導権を奪い取る。守り切るのではなく、勝ち切ることこそが、この日の浦和の姿勢だった。

 その背景には、リーグ戦での低迷も起因するだろう。7試合勝ちがなく、15位に転落し、残留争いに巻き込まれている。ルヴァンカップでも鹿島アントラーズに敗れ、ベスト4進出はならなかった。その負の連鎖を断ち切るためにも、闘う姿勢を打ち出すことが何より求められていたのだ。

「国内のリーグの状況を省みても、ここでひとつ、我々が浦和レッズだというところを見せなければいけなかった」

 試合後、指揮官はそう振り返っている。

 かくして、強い危機感を備えてこの試合に臨んだ浦和は、ブラジル代表のオスカルらビッグネームを擁する上海上港に真っ向勝負で挑んだ。序盤こそ相手のハイプレスに苦しむ場面も見られたが、次第に主導権を握ると、サイドを効果的に使った攻撃で相手ゴールに迫っていく。

 そして39分、待ちわびた先制ゴールが生まれる。決めたのは、興梠慎三だ。故障を抱えてこの試合に臨んだ浦和のエースは、卓越した動きでDFの視野から外れ、フリーでヘディングシュートを叩き込んだのだ。

 この1点が、浦和の戦いを楽にした。後半に一瞬の隙を突かれて1点を返されたものの、その後は粘り強い守備で追加点を許さず、警戒していたオスカルやマルコ・アルナウトビッチにも仕事をさせなかった。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る