横浜FM、「矛」が「盾」を突き破る。首位肉迫でこのまま無双を誇るか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

 後半7分、広島はボランチの青山敏弘が警告を受け、激しい守備ができなくなる。するとチーム自体、守勢に入ってしまった。後半16分には、GK大迫敬介が遅延行為でイエローカードを受けていた。

「自分たちのサッカーで勝ってきて、今日もチャンスを作ることができていました。だから、後半もこの形を続けよう、と話していました」(横浜FM・仲川輝人)

 横浜FMは嵩(かさ)にかかって攻めに出た。後半22分には、20本近いパスをバックラインから回す。左サイドで幅を作りながら、左サイドバックのティーラトンが左FWの遠藤渓太にスルーパスを通す。ニアへのグラウンダーのクロスに走りこんだFW仲川が、GKの鼻先で合わせて先制ゴールを決めた。

「矛」が「盾」を突き破ったのだ。

「広島の守備が強く、堅いのはわかっていました。その勝負で強度を保てるか。自分たちとしては速いテンポのサッカーを狙い、それができていました。ただ、(守備力の強い)広島に先制されていたら、難しい展開になっていたでしょう」(ポステコグルー監督)

 ボールを前に進めるプレーモデルを確立した横浜FMは、リードしても下がらなかった。後手に回った広島を完全に追い込んだ。

 81分、センターバックの畠中槙之輔が左サイドに開き、前線へフィード。これに敵が混乱し、クリアに失敗した。そのボールを左サイドバックのティーラトンがエリア内で拾い、左足ボレーを叩き込んだ。

 さらに84分には、カウンターを発動。左サイドでボールを受けたマテウスが躊躇なく左足を振る、その一撃がタックルに及んだ広島の選手のハンドを誘い、PKの判定に。これをエリキが沈め、試合を決した。

「(優勝を争う)大事な試合だったが、普段どおり、自分たちの力を出し切ることができた」(横浜FM・喜田拓也)

 横浜FMのサッカーの正当性は順位で十分に証明されているが、もうひとつ、大事な産物がある。

 今シーズン、横浜FMは天野純(現スポルティング・ロケレン)、三好康児(現ロイヤル・アントワープ)、畠中などの日本代表選手を輩出している。仲川もそれに匹敵するプレーを見せていると言える。プレーモデルが確立したことで、各選手が持っている技術を出せるようになり、それに自信をつけた選手が成長を示しているのだ。

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