横浜FM、「矛」が「盾」を突き破る。首位肉迫でこのまま無双を誇るか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

 横浜F・マリノスは、リーグ屈指の攻撃型チームと言える。第25節終了時点で得点数45は、鹿島アントラーズに次ぐ2位。攻めの姿勢が目立つのは、引き分けが3つと打ち合いを制している点にあるだろうか。逆に、上位にしては失点(32)が多く、その落差が攻撃力を引き立てているとも言える。

「Fast Game」(速い展開のゲーム)

 オーストラリア人指揮官、アンジェ・ポステコグルーは端的に戦いの様式を標榜し、上位対決となったサンフレッチェ広島との戦いに挑んでいる。

サンフレッチェ広島戦で先制ゴールを決め喜ぶ仲川輝人(横浜F・マリノス)サンフレッチェ広島戦で先制ゴールを決め喜ぶ仲川輝人(横浜F・マリノス) 9月14日、ニッパツ三ツ沢球技場。3位の横浜FMは4位の広島と"優勝争いへの生き残り"を懸けた一戦を迎えている。

 それはまさしく、「矛」と「盾」のぶつかり合いだった。横浜FMは攻撃力を武器とし、広島は第25節終了時点で最少失点(18)の堅い守備をよりどころにしていた。試合の様相は「矛」が「盾」を突く形で始まった。

 横浜FMはバックラインからボールをつなげる技術の練度が高い。中盤ではサイドバックとトップ下のマルコス・ジュニオールが一度密集してパスコースを作り、優位を作る。そこから素早く外に展開し、高い位置での攻撃を可能にしていた。ボールを奪われた後、セカンドボールへの対応も早かった。

 ただ、広島は攻められながらも、守りのリズムを作って対応し、堅牢な盾を誇った。一方でバックラインの裏へ効果的なボールを入れ、ゴールを脅かす。カウンターでは、右サイドを駆け上がるハイネルのスピードが脅威を与えた。さながら、盾の陰から出る飛び道具のようだった。

 しかし、横浜FMはリスクを懸けた戦いを怯まない。後半になると攻撃の勢いをさらに強めた。矢を打ち込むように縦パスを入れ、広島をくぎ付けに。相手の強度の高い守備に潰されそうになっても、足を止めなかった。

「前半、(相手の守備に)イライラせずにプレーできたのがよかったと思う。後半も激しくチェックされたが、メンタルを保ってプレーできた。そして相手選手がイエローカードをもらって......」(マルコス・ジュニオール)

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