2019.09.14

国籍は関係ない。菊原志郎が
「個の育成」で追求する周囲を助けるプレー

  • 鈴木智之●取材・文 text by Suzuki Tomoyuki
  • photo by Sportiva

「試合の中でうまくいかない状況なんて、いくらでもありますよね。トーナメントであれば、勝ち上がるほどに相手が強くなり、問題も出てきます。問題解決能力を高めないと、個人であれチームであれ、上に行くことはできないんです。それを若いうちに学ぶのはすごく大切なことだと思います」

 問題や課題を把握し、そのために行動して解決する。それはサッカーに限らず、日常生活や社会に出たときにも必要な要素である。同時に、サッカーはチームスポーツであり、集団の中で自分がどう動き、問題を解決するかという視点も重要になる。

「よく"個の育成"という言葉を聞きますが、1人でドリブルをして、何人も抜く選手にするのが個の育成ではないんです。サッカーは個人スポーツではなくチームスポーツなので、チームメイトとの関係性の中で、自分の力を発揮する能力を身につけることも、個の育成です。"組織の中で、いかに光る個になるか"という発想を持たないといけません」

 さらに、菊原は続ける。

「もちろん、1人でボールを奪って、1人でゴールを決める選手になれるのが理想ですが、それはなかなか難しいですよね。1人でボールを奪えないのなら、2人、3人と連携し、協力してプレーする。そうやって、周りとの関係性の中で個性を出せる選手を育てることが、個の育成だと僕は思います」

 菊原は日本にいたときも、中国の広州富力のアカデミーでも「サッカーはチームスポーツであり、味方と協力してプレーすることの大切さ」を重点として指導している。そのため、ゴールを決めた選手だけでなく、アシストをした選手、ボールを奪った選手など全員を評価し、全員で喜ぶようにしているという。

「すべては教育だと思います。子どもには、良い考え方や良い習慣を学んでほしい。そうすれば、サッカーをやめたとしても、別の世界で仕事をする上で生かされると思います。そこは日本人だから、中国人だからなど、国籍は関係ありません。周りと協力すること、思いやりを持つことの大切さは、中国に来てより感じるようになりましたね」