2019.09.13

習近平も強化を後押し。菊原志郎に聞く
中国サッカー育成現場のリアル

  • 鈴木智之●取材・文 text by Suzuki Tomoyuki
  • photo by Sportiva

 広州富力がある地域は、日本の港区や丸の内といったエリアに似た雰囲気がある。菊原いわく「都会的で外国人や富裕層が多く住んでいる地域」だという。

「だから、サッカー以外の教育にも力を入れる保護者が多いです。もともと中国は競争社会、学歴社会なので、小学1年生でも、学校の授業が夕方まであります。宿題もとにかく多いので、選手たちは練習の直前まで宿題をしていますし、遠征には英語と数学の教師をクラブが連れていきます。さすがに、ここまでしているのは広州富力だけだと思います」

 全国大会の期間中も、午前中に試合をしたら、午後は勉強の時間をとるなど、サッカー以外の教育にも力を入れている。その甲斐あって、広州富力のアカデミーは昨年「最優秀育成クラブ」として表彰を受けたという。

 W杯出場、そして優勝という習近平の夢実現に向けて、自国選手の育成に力を入れる中国。リーグの規定を次々に変え、育成に資金が流れるように設計中だ。

「中国スーパーリーグのクラブは、フッキやオスカル、パウリーニョなどのブラジル代表選手やルイス・フェリペ・スコラーリ、マルチェロ・リッピなどW杯優勝経験のある監督を連れてきて、トップリーグのレベルは上がってきましたが、代表チームはそれほど強くなっていません。結局、子どもからしっかりと指導をし、育成することが大事だとわかり、『年間予算の15%をアカデミーに使いなさい』というルールと『移籍金で外国人選手を獲得した場合は、同額を中国フットボール基金に払う』という決まりができました」

 ちなみに、広州富力が2019年1月に獲得した、ベルギー代表のムサ・デンベレの移籍金はおよそ15億円。それと同額が中国フットボール基金に支払われ、若手選手の育成に費やされる計算だ。さらに、広州恒大はレアル・マドリードと提携、広州富力は梅州にもアヤックスと提携したサッカー学校を運営するなど、世界の先端を凄まじい勢いで吸収しようとしている。