横浜FCが13戦負けなしで絶好調。J1昇格へ気になる若手が台頭している (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Etsuo Hara/Getty Images

「ビデオで研究し、あの(松尾の)スピードは警戒していたんですが。2人がかりでもやられてしまったので、どうしようもなかったですね......」

 甲府の選手は、ため息まじりに洩らしていた。

 この夜の主役は松尾だった。バックラインやGKからのロングパスを、巧みにコントロールし、起点として攻撃の厚みも与えていた。まだ仙台大学の学生で、22歳の強化指定選手。第20節のファジアーノ岡山戦で初出場して以来、チームはまだ負けていない。

 5月まで、横浜FCは負けが先行していた。しかし、下平隆宏監督が就任して以来、チームの戦い方は安定している。三浦知良、中村俊輔、松井大輔、レアンドロなどベテラン選手が注目されるが、一方で松尾だけでなく、斉藤光毅、中山のような若手が台頭してきた。「チームの雰囲気がいい」と選手たちが言うように、刺激を与えあっている。

 結局、横浜はシーソーゲームを3-2で勝ち切った。これで単独2位をキープ。同じ日、首位を独走していた柏レイソルが敗れたことで、背中が見えてきた。

「あれを止めないと自分の存在価値を示せない。アラーノが入ってきた瞬間、これは来るな、と準備していました」

 今年で40歳になる横浜FCのGK南雄太は言った。終盤、決定的なシュートをはじき出し、チームを救っている。

「うちは両翼にあれだけ速い選手(松尾、中山)がいるので、相手は嫌でしょうね。松尾はとにかく速い。しっかり守っていれば、必ず点は取ってくれると信じていますよ」

 その信頼感こそが、チームを好転させているのだろう。

 一方、敗れた甲府も、依然として1試合でプレーオフ圏内に滑り込める状況で、反撃の余地は十分に残されている。ただし、安穏ともしていられない。9月7日現在、暫定で8~11位のツエーゲン金沢、徳島ヴォルティス、V・ファーレン長崎、ファジアーノ岡山の4チーム(いずれも勝ち点46)との勝ち点差は3。プレーオフ出場権を巡っては、下位から巻き返すチームもある気配だ。

 混沌とするJ2。昇格をかけたドラマは佳境に入ろうとしている。


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