2019.09.04

原発事故の影響を乗り越えて
Jヴィレッジ再開も、活況復活には課題山積

  • 松尾祐希●取材・文 text by Matsuo Yuki
  • photo by Matsuo Yuki

 だが、震災の影響で以前と比較すると、ホテルや旅館などが大幅に減った。とくに福島第一原子力発電所に近い富岡町や楢葉町の宿は、いまも作業員の宿泊施設として利用されており、サッカーチームなどが活用できる見込みが立っていない。現状では広野町の宿しか使えない状況だ。


旅館岩沢荘には、現在も寄せ書きやペナント、写真が多数飾られている「旅館の組合長も亡くなり、周りの人たちも年配になった。富岡町の宿も取り壊されてしまった。今はサッカー関係の宿泊に携わっていたのは私しかいないから、昔みたいにはできない。Jヴィレッジからもまた力を貸して欲しいと言われていて、やりたいけど、はっきり言って厳しい。

 周りにも声掛けをしたけど、Jヴィレッジへの送迎用にバスも買わないといけないから大変です。現状でサッカー関係に協力できるのはうちを含めて、4つぐらいしか施設がないんです」

 今後の動向は何も決まっていないが、1997年から2010年まで開催されていたU-18とU-15のクラブユース選手権など各年代の全国大会を再び誘致するためには、周辺にある宿泊施設の協力が欠かせない。吉田さん自身は、大規模な大会が再び開催されるのであれば、尽力する意向を持っている。

「こうやってまた来てもらえているのは奇跡に近い。女子サッカーの藤枝順心高校さんとかはよくうちを指名して泊まってくれていて、先日は千羽鶴をくれたんです。これを見て、もう一度励んでみようと思いました。昨年女房が亡くなって悲しいこともあったけど、仕事をやっていれば、落ち込まずに働ける」

 正直、現状では宿数の問題で全チームを受け入れられないだろう。大規模な大会に対応するためには、いわき市内の宿なども検討しなければいけない。もちろん、彼らを受け入れれば、食事の用意や送迎など、今以上に負担がかかる。中には手伝えないという意見も出てくるかもしれない。

 また、廃炉作業が終了していない福島第一原発周辺は、県内の他地域と比べ依然高い放射線量を記録している。基準値を下回っているJヴィレッジとはいえ、福島第一原発近隣での活動に懸念の声が消えないのも辛いところだ。

 だが、地元の人たちはさまざまな困難と向き合いながら、今も子どもたちを待っている。選手たちの頑張りが希望になっているからだ。

 Jヴィレッジに全国大会は戻ってくるのか。これからも注視したい。

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