出会いは12歳の時。イニエスタが語る、同い年の盟友・トーレスとの絆 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 ただしそこには、センチメンタルな感情だけがあるわけではない。決してこの試合は興行ではなく、れっきとしたリーグ戦である。しかも、神戸は現在15位と苦戦を強いられている。ひとつ順位が下の鳥栖は、残留を争うライバルでもあるからだ。

「次の試合は我々にとっても、相手にとっても、とても重要な試合だと思います。お互いの順位もありますし、残りのリーグ戦を戦ううえで大事な試合になる」

「トーレスにはすばらしい試合をしてほしい」という気持ちがある一方で、「結果としてヴィッセルが勝てる試合になれば最高かなと思います」と、偽らざる胸のうちを明かしている。

 20年以上の縁である。イニエスタの中には、トーレスとの数々の思い出があるはずだ。2008年から2012年までのスペイン代表最強時代には、多くの歓喜を分かち合っただろう。クラブシーンでは対戦相手として、お互いにタイトルをかけてしのぎを削った。2011-12シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝でトーレスに煮え湯を飲まされたことも、イニエスタには大きな痛みとして残っているに違いない。

 しかし、イニエスタにとってトーレスとの最大の思い出は、ユーロ優勝でも、ワールドカップ優勝でもない。

「もちろんそういった結果もありますが、なによりも彼との友情、彼のすばらしい人間性というものを自分のなかで大切にしている」

 友情という言葉だけでは計り知れない強固な絆で、ふたりは結ばれているのかもしれない。あらためてイニエスタにとって、トーレスとはどういった存在だったのだろうか。

「彼はサッカー界における模範的な存在だと思います。実際に、彼は所属したすべてのチームで結果を出し、重要な選手として活躍してきた。それぞれのチームで愛され、英雄的な扱いを受けてきた。スペインのスポーツ界全体でも、トップクラスの選手だと思います。

 アトレティコ・マドリードでデビューした若い時から、長年にわたりトップコンディションを保ち続けてきたのはすばらしいこと。そんな彼の最後の試合の相手が自分であるということは、本当に喜ばしいことです」

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