湘南スタイルはどうなる?疑惑に揺れるなか、らしさは失われていた (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 もちろん、風間八宏監督から鬼木達監督に引き継がれた川崎フロンターレや、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督から森保一監督に引き継がれたサンフレッチェ広島のように、スタイル継続の成功例がないわけではない。だが、どちらかと言えば、少数派だ。

 実際、曺監督不在での初戦となった鳥栖戦でも、どこか湘南らしい勢いが感じられなかった。結果論を承知で言えば、指揮官不在の影響は小さくなかった。

 高橋コーチは、「選手はやろうとするあまり、硬い感じがした」という前半を経て、「2点のビハインドを追いついたことは評価したい」と、前向きに語った。

 だが、同点に追いつき、そこから気落ちした相手に一気に畳みかけるのが、本来の湘南の強さである。2-2になったあともいくつかチャンスはあったものの、80分を過ぎたあたりからは、勝ち越せそうな雰囲気が失われていった。

 前半からイージーミスが目立ち、それが修正されないまま、後半まで続いた。いつもの湘南なら、相手のミスを見逃さずに攻め込むはずが、ミスにミスで応え、逆にピンチを招くような場面も多かった。山田は「(曺監督不在の初戦である)この試合で、自分たちがどれくらいやれるのか不安な気持ちがあった。それが(2失点した)前半、みんなの足を重くした要因ではないか」と話している。

 鳥栖の金明輝(キン・ミョンヒ)監督も「湘南は柱がいないなかで、(その相手に)負けるというのは......。勝って(曺監督への)リスペクトを示したかった」と話していたが、ピッチ上に漂う、湘南らしからぬ雰囲気を敏感に悟っていたのではないだろうか。

 今回のパワハラ疑惑は、もはや湘南だけで解決できる問題ではなくなかった。繰り返しになるが、Jリーグの調査結果を待つしかない。

 だが、湘南としては、やはり、曺監督がチームを離れる事態は避けたいというのが本音だろう。指揮官抜きでの湘南スタイル継続は、おそらく簡単な作業ではない。

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