湘南スタイルはどうなる?疑惑に揺れるなか、らしさは失われていた (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 今夏、浦和レッズからの期限付き移籍で1年半ぶりに湘南に戻ってきたMF山田直輝は、「僕ら選手たちも(事の経緯を)よくわかっていない」と言い、「調査の結果を待つしかない」と繰り返していたが、まさにそのとおりだろう。

 とはいえ、調査を待つ間も、試合は続く。その間、湘南は指揮官不在の戦いを強いられることになる。

 もちろん、何かが大きく変わるわけではない。曺監督に代わってチームの指揮を執る高橋健二コーチも、「(鳥栖戦までの1週間の準備は)今までやってきた流れでやってきた。練習の熱は落とさず、インテンシティ高くやった」。選手に対しては、「我々のサッカーは、我々にしかできない。何も変えることはない。そこを突き詰めよう」と声をかけたという。

 選手も当然、気持ちは同じだ。

「湘南のサッカーは根づいていると思うので、それを信じてやるしかない」(DF大野和成)

「勝利という結果もそうだが、今までやってきたことを表現していくのが大事」(MF齊藤未月)

「曺さんが築き上げてきたサッカーを続けるしかない。違うサッカーをやったら、勝ち点を取れないチームになってしまう」(山田)

 しかしながら、かじ取り役がいなくなったとき、同じサッカーを同じレベルで続けることは、意外なほど難しい。それは歴史が証明している。

 たとえば、イビツァ・オシム監督が率いたジェフ千葉。「考えて走る」という言葉が有名になったが、ピッチの幅をいっぱいに使ってボールを動かし、生まれたスペースへ次々に選手が飛び出していく。そんなサッカーは、実にダイナミックで見応えがあった。リーグ戦では惜しくも優勝には手が届かなかったものの、ナビスコカップを制するなど、タイトルも手にしている。

 当然、オシム監督が日本代表監督就任によって退任が決まったあとも、スタイルの継続を目指した。後任に、息子のアマル・オシム監督が就いたことも、その目論見を物語る。

 しかし、オシム監督が築いたスタイルが崩壊するまでに、さほど時間は要さなかった。その後は次々に監督が入れ替わり、迷走状態を抜け出せず、現在に至っている。

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