主力が抜けても鹿島が強い原動力。「潤滑油」土居聖真が地味にスゴイ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

 後半にもミドルシュートを決めた柴崎は、その後、スペインに渡り、日本代表選手としても名を成すことになった。柴崎だけではない。冒頭で触れた選手たちが鹿島から次々と卒業していくなかで、土居は鹿島に残ったまま、知る人ぞ知る好選手の枠内に留まっている。

 その胸中はどうなのか。しかし、現在の鹿島で最も貴重な存在であるのは確か。土居がいるからこそ、鹿島は高いレベルを保つことができている印象だ。

 大物風を吹かしているわけではない。与えられたポジションを忠実にこなす。監督にとって使い勝手がいい選手でもある。

 鹿島と言えば4-4-2。使用する布陣は、どういうわけかほとんどこれに限られている。だが、その2トップの一角として出場することが多い土居は、ストライカーという感じではなく、4-2-3-1に落とし込むなら1トップ下、4-4-1-1なら1トップ脇と、微妙な役割を果たしている。そのおかげで鹿島の4-4-2には広がりがあるのだ。

 さらに土居は左右のサイドハーフもこなし、アタッカー陣の潤滑油的な存在になっている。これまではその要素が勝る脇役だった。だが現在は、その要素を保ちながらも、主役としての風格が備わってきている。

 想起するのは、レアル・マドリードの看板選手として活躍したラウル・ゴンサレス(現レアル・マドリード・カスティージャ監督)だ。左利きと右利きの違いはあるが、潤滑油的な役割を果たす姿はそっくりだ。ラウルは高度な協調性を保ちながら、チームに多くのゴールをもたらした。典型的なストライカーではないのに、高い得点感覚を備えていた。

 シュート力。土居の課題はこれだろう。得点力が増せば鬼に金棒。中途半端な海外組より、日本代表の有力候補になるだろう。いつ脚光が当たっても不思議ではない好選手、それが土居聖真だ。

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