東京五輪のエースFWと呼ばれた男がJ2で躍進する水戸で密かに奮闘中 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

 堅守を最大の武器に、少ないチャンスを確実に生かすことで勝ち点を積み重ねてきたチームだけに、FWにとっては適応が簡単ではないだろうが、小川自身は「やること、求められることはすごく多いが、多くを求められることで、自分も成長する」と、意気盛んだ。

 第23節での途中出場のあと、第24節からは4戦連続先発出場。J1昇格を争うチームの貴重な即戦力となっているが、それでも本人は「試合に出ることでしかわからないことを今、経験している」と言いつつ、そこに「充実感はまったくなく、危機感しかない」と言い切り、こう続ける。

「90分の試合の(週末の試合の間に水曜日の試合が挟まる)3連戦は初めてだったし、そこでのコンディションの整え方だとかは体験しないとわからない。試合に出ているということでは充実しているのかもしれないが、危機感が強い」

 このところ、日本では海外移籍の低年齢化が進み、東京五輪世代の選手たちも次々に海を渡っている。そんななか、自分はカテゴリーを落とし、J2に新たな戦いの舞台を求めたのだから、危機感が強いのも当然だろう。小川は「水戸でレギュラーを取ったとは思っていないし、ここでもポジション争いはある。得点を重ねないと、ここで試合に出るのも難しいし、オリンピック代表(に選ばれるの)も難しい」と自覚する。

 だからこそ、22歳の点取り屋は、チームで求められるさまざまな役割を理解しながらも、「一番大事なのは得点だ、ということを忘れてはいけない」と口にする。今、頭の中にあるのは、「自分が中心になってやって、得点を取って、(水戸を)上(J1)に上げる」ことだけだ。

 直近の第27節、横浜FC戦で何度もマッチアップを繰り広げた元日本代表のDF伊野波雅彦は、「(水戸に)入ったばかりで難しいところがあるのだろう」と気にかけつつ、小川のプレーについてこう語る。

「(DFとMFの)間に下りたりしてボールを引き出すかなと思ったが、動きも少なかったし、そのタイミングでボールも入ってこなかった。1対1になったときには、もっと仕掛けてもいい。もっとやれると思う」

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