首位堅持。いまのFC東京には「運を引き寄せる」だけの実力がある

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

「Big mistake」

 ベガルタ仙台のポーランド人GKヤクブ・スウォビィクは、PKの蹴り直しの判定に関し、英語で「大きな間違い」と言った。後半17分のPKのシーンで、一度はディエゴ・オリヴェイラの正面のキックを読んで止めるが、「両足がゴールラインから離れた」という新ルールの適用でやり直しになり、二度目は右隅へ放り込まれた。

「全員がハードワークしていたので、残念な結果だ」

 スウォビィクはそう言って悔しさを滲ませた。

 審判の規則適用は、厳しすぎたという印象が強い。勝負ごとに「たら、れば」はないが、そのビッグセーブで仙台が勢いに乗っていた可能性は十分にある。その意味で、彼らは不運だった。

 逆に言えば、FC東京は運を持っていた。

ベガルタ仙台を下し、ホッとした表情のFC東京の選手たちベガルタ仙台を下し、ホッとした表情のFC東京の選手たち 8月10日、味の素スタジアム。首位に立つFC東京は、12位の仙台を本拠地に迎え撃っている。順位的には格下だが、過去のリーグ戦は3連敗。カップ戦を含めると1分け6敗で、煮え湯を飲まされ続けていた。

 昨シーズン、FC東京が8月中旬から下位チーム相手に取りこぼしを続け、8試合勝ちなしだったことを考えれば、優勝するためには試金石となる一戦だった。長谷川健太監督が率いるFC東京は、引いて守る戦い方を選んだ。

<GKにバックパスされても、無理して(プレスに)いかなくていい>

 それぞれのラインでブロックを作り、守備のフィルターを作り、攻撃をしたたかに飲み込む。サイドバックは堅く門を閉じ、たとえクロスを上げられても、センターバックが力強くはじき返し、可能性の乏しいミドルシュートを打たせる。鉄壁を誇った。

「(首位のFC東京を相手に)隙を与えず、隙をつくか、の90分だと選手には伝えていた。しかし、あそこまで極端に下がるとは思っていなかった。想像を超えていた。ボールを持てるなら、渡すわけにもいかず、リスク管理しながら(チャンスを狙った)......」(仙台・渡邉晋監督)

 仙台がボールを握るものの、攻めに人数をかけると、カウンターで脅かされる。リスクを取れないことで、堅守を前に立ち往生。前半は、じりじりとした時間が過ぎた。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る