サッカールール改正でハンドの
基準再定義。反則になるケースは?

  • 清水英斗●取材・文 text by Shimizu Hideto
  • photo by Getty Images

 このように新ルールでは、さまざまな状況に切り分け、ハンドとなる事象、ならない事象が細かく定義されている。

 とはいえ、これらの定義によってグレーゾーンが完全になくなるわけではない。

「難しいのは、腕の位置が肩より下にあるときです。どこからが"不自然"なのか。僕らの立場から"30度だよ"とは言えません。極力ハンドのリスクを小さくするためには、腕を広げないほうがいい、と言うしかありません」

 典型的なケースは、女子ワールドカップ決勝トーナメント1回戦、オランダ戦の熊谷紗希のハンドだ。

「これはどう思いますか? 腕は結構広がっていましたよね。今までで言えば、"距離とスピード"という言葉を使いました。つまり、避けられないから仕方がない、意図はない、と。それらを総合的に考えれば、PKを取らない人はいるかもしれません。

 でも、新ルールでは距離やスピードを考える必要はないんですよ。体を不自然に大きくしたか、していないか。そこの判断だけです。オランダからすれば、大きいよ、と言うでしょう。日本からすれば、これは不自然じゃないよ、と言うはずです。それを決めなければいけないのがレフェリーで、最後はレフェリーの意見に委ねることになります」

 これらのルール改正については、すでに審判が各クラブを訪問し、選手や監督へ説明の場を設けている。それを受けた浦和レッズの宇賀神友弥は、こんなふうに感じたそうだ。

「ハンドのところは、すごく微妙だなと思います。(基準が一部明確になったことについては?)難しいですよね。やっぱり判断を下すのは人間なので、審判の主観というか、さじ加減で結局変わってきちゃうなと思うので。ルール改革と言っても、あまり変わらない気がします」

 実際のところ、このハンド改正について、選手はそれほど大きくプレーを変える必要はないだろう。ブロック時に腕を広げないことは、多くの選手が以前から気をつけている。その腕のたたみ方を、ボールとの距離の近さなどにかかわらず、あらためて徹底したほうがいい、といったくらいか。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る