10試合連続白星なし。結果の出ない風間グランパスは美学を貫けるか (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

「勝ててないっていう意識があるかもしれない。チームとしては(前から)行けるところは行こうっていう話はしていたんですけど、やっぱり相手にかわされるのが怖いというか、全体的に後ろが重くなった印象はあります」

 2点目を奪った前田は、そう振り返る。

 風間監督はハーフタイムに「出して、受ける。リズムよくボールを動かす」というチームの理念を、あらためて選手たちに求めている。しかしピッチ上の選手たちには、1点を守り切ろうという意識が働いたのかもしれない。高い位置でボールが取れず、奪っても簡単に蹴ってしまう場面が散見された。前に人数をかけられず、持ち前のパスワークはほとんど機能しなくなっていた。

 それでも、3点目を奪うチャンスがなかったわけではない。名古屋がリードしている以上、相手が出てくるのは当然であり、そうなればカウンターが有効となる。実際にその機会は、いくつか訪れた。だが、切り替えが遅く、スペースに飛び出す人数が足りず、結果的にシュートにまで持ち込む場面は少なかった。

 ポゼッションを重視したパススタイルを標榜する名古屋には、カウンターという概念が希薄なのかもしれない。ここぞという場面で一気に相手ゴールに迫る迫力が、まるで感じられなかった。

 あるいは、そこには暑さの影響もあっただろう。ガブリエル・シャビエルは前のスペースに走り出せず、前半は無双だったジョーもボールを収められなくなってしまう。ACLの日程の影響で、中3日でこの試合に臨んだ浦和に対し、名古屋は2週間ぶりの一戦だった。コンディション的には優位にあるはずだったが、先に足が止まったのは名古屋のほうだったのである。

 それでも、3点目は奪えなくとも、なんとか同点ゴールを許さずに時間を刻んでいた。風間監督も「よく守っていた」と、選手たちのパフォーマンスを称えている。ケガ人が続出し、スクランブル態勢を強いられるなかで、相手の猛攻によく耐えていたのはたしかだろう。

 しかし、勝利の味を忘れてしまったチームには、逃げ切るための策が備わっていなかった。あと数分、耐え切るだけの余裕が、彼らにはなかったのである。

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