注目はリスタート。サッカーの新ルール適用開始の狙いはどこにある? (4ページ目)

  • 清水英斗●取材・文 text by Shimizu Hideto
  • photo by Getty Images

 この感覚こそ、できるだけ多くの人の間で共有したいものだ。小川審判委員長は、「ルールはみんなのもの。レフェリーだけのものではない」と語る。

「昔の日本の競技規則は、"警告する"、"退場を命ずる"という表現で書かれていました。レフェリーが主語で、レフェリー目線で書かれていたんですよ。でも英語版では違いました。"警告される"、"退場を命じられる"と、受動的な表現だったんです。

 つまり、競技規則はレフェリーだけのものではなく、みんなのものなんだよ、という意識です。今は日本語版の規則も、そのように(受動態に)書き換えられています。今回のルール改正も、サッカーの発展をみんなで魅力あるものにしようと、それが第一にあります。そのベースを忘れてはいけないと思います」

 ルールはみんなのもの。

 すばらしい発想だが、そうは言っても、自分の都合の良いようにルールを解釈し、利用する者も出てくるのではないか。

 たとえばルール改正の一つには、レフェリーにボールが当たった場合、ドロップボールで再開されるという項目がある。かつては「レフェリーは石」と呼ばれ、ボールが当たってもプレーを続行する規則になっていたが、今後は石とは考えられなくなる。

 なぜなら、レフェリーに当たったボールが被カウンター機会を生んだり、得点につながったりすることは、稀とは言え、今までにも起きてしまっていたからだ。それは公平、公正と言えるのか。その問いに答えるため、ドロップボールという改正が行なわれたわけだ。

 しかし、個人的には、この改正内容は、新たな争いの火種を含むようにも感じられる。つまり、わざとレフェリーにボールをぶつけ、ドロップボールを得ようとする選手が出てくるのではないか、という疑念だ。

 ドロップボールは地面に落ちた瞬間にインプレーになる。そのボールを直接ゴールに入れても得点は認められないが、パス以外にドリブルも可能であるため、新たな攻撃チャンスが広がるかもしれない。

また、今回のルール改正では、インプレーになった瞬間両者が奪い合っていたドロップボール自体も争いを避けるために整理され、ペナルティーエリア外ではラストタッチしたチームにドロップする規則となり、相手も4メートル以上離れなければならない。こうなると、わざとレフェリーにボールを当て、ドロップボールを得て、フリーな状態でクロスなどをねらう選手 が現れないとも限らない 。

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