注目はリスタート。サッカーの
新ルール適用開始の狙いはどこにある?

  • 清水英斗●取材・文 text by Shimizu Hideto
  • photo by Getty Images

 その一方、宇賀神友弥は、この変化に対する警戒心も強く持っている。

「(ゴールキックのルール改正を)うまく使って、(相手のパスが)出た瞬間に行けば、もっと守備をはめに行くこともできると思います。そこは一つ考えなければいけないし、パスサッカーをするチームにとっては、逆に苦しい部分もあるのかなと。また、そこを攻略できれば面白いと思います」

 たしかに、このルール改正をビルドアップに利用しそうなチームは、おおよその見当が付く。プレッシングの標的になる場面もあるだろう。「そういう駆け引きが、最前線で出てくるんじゃないかなと思います」と、宇賀神選手は予想している。

 パスをつないで外すか、奪い取りに行くか。じつにスリリングだ。両チームの哲学が強く反映されるゴールキックの駆け引きが増えれば、試合は面白くなるに違いない。

 また、そこに関しては一つ、注意点を挙げておきたい。

 ゴールキック時、相手チームの選手は今まで同様にペナルティーエリアに入れないが、攻め残った相手がいる状態でクイックリスタートが行なわれた場合は、たとえエリアから出ていなくても、そのままインプレーとなる。つまり、攻め残っていた選手は、すぐにボールにチャレンジすることが可能だ。

 その件について、JFA(日本サッカー協会)の小川佳実審判委員長は、次のように解説する。

「考え方としては、フリーキック時に9.15m離れなければならないルールと同じです。蹴られる前、インプレーになる前に近づいたり、ボールに足を出したりしたらファウルですが、蹴られた後なら、足を出してインターセプトしても構いません。

 これは今でも理解していない人がいて、"近くにいたんだからやり直しだろう"と言いますが、そこに相手が居るのに構わずリスタートしたわけですから、そのままインプレーです。足を出すのはまったく問題ありません。

 そういったことが、ゴールキックでも起きる可能性はありますね。倒れた相手が起き上がる前にリスタートしたら、直後に起き上がった相手にボールを奪われる 。それで失点するケースは出てくると思います。"ペナルティーエリアを出てないからやり直しでしょ"とはならないので、注意が必要です。今でもフリーキックは問題なくインプレーで進めているので、同じ考え方になります」

 新ルールの適用により、最前線の駆け引きは活発になるだろう。しかし、ルールの理解にズレがあると、思わぬ不利益を被るかもしれない。注意したいポイントだ。

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