クラブ運営はつらいよ。今季の浦和レッズを見て思う強化の難しさ (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

 鹿島の生え抜き選手たちが、こうした行動を取るのは、クラブが一貫したチームづくりをしていることが影響している。戦術だけに限らず、スカウティングや選手の獲得方針は監督が誰であってもほぼ変わらない。同じ遺伝子を持つ選手たちを集め、同じ哲学のもとで育つからこそ、クラブの伝統が脈々と受け継がれているのだ。

 これは鹿島が、サッカーは移籍の多いスポーツだからこそ、「チームの核となるべき日本人選手を育てる重要性を理解している」ということでもある。鹿島に限らず、Jリーグの強豪として存在感を発揮しているクラブには、必ず精神的な支柱となる日本代表クラスの日本人選手がいるものだ。

 鹿島なら昨年までは小笠原満男であり、現在は内田篤人。川崎フロンターレには中村憲剛。和幸・浩司の森崎兄弟が引退したサンフレッチェ広島には青山敏弘。G大阪の遠藤保仁は生え抜きではないものの、G大阪が常勝チームになったのは彼が加入してからのことだ。

 風間八宏監督が率いる名古屋グランパスや、アンジェ・ポステコグルー監督のもとでスタイルを一変させた横浜F・マリノスは改革を進めているが、真の意味で両クラブが哲学を手にできるかは、「チームの顔」となる代表クラスの選手が育ってくるかどうかが大切な要素と言っていいだろう。

 直近で成績を残しながら、5年後、10年後、さらに20年後も見据えて強化を続ける。言葉にするのは簡単だが、これほど難しいことはない。だが、それを実践していく過程でクラブ哲学というものが生まれてくると私は考えている。

 しかも、計画どおりに進んだとしても、サッカーは地球全体規模のスポーツであるため、時代の趨勢によって変化を求められることもある。それを理解してクラブが強固な組織体制をつくっていけるか。容易ではないことだが、これが実現できれば、常勝チームへの道を切り拓くことができるのではないだろうか。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る