クラブ運営はつらいよ。今季の浦和レッズを見て思う強化の難しさ (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

 その彼らが、4バックでボールを奪ってカウンターというスタイルを得意にするオリベイラ監督のもとでプレーすることは、自らの特長を十全に発揮しづらい部分もある。

 これは、監督の責任というよりは、浦和がクラブ組織としてしっかり考えて判断すべき問題だと感じているが、そうした状況で火中の栗を拾うことになった大槻毅監督は、チームの立て直しをはかっている。

「去年も指揮しているし、選手たちのことも知っているのだから、うまくできるでしょう」と、考える人もいるかもしれない。だが、大槻監督が取り組む仕事は相当に困難なもの。今季の残り試合で結果を残しながら、来季、優勝を目指せるチームづくりの土台も構築しなくてはいけないからだ。

 来季のことを考えるならば、浦和を常勝軍団にするためにも、すべてを監督任せにするのではなく、クラブとしてこの先10年、20年先のビジョンを明確に描き、そこに到達するためのクラブ運営と強化のノウハウを蓄積していってもらいたい。

 そうした難しい状況にありながらも、大槻監督は巧みにマネジメントしていると思う。ここで積極的に若手を起用するなど、「世代交代」をうまくできるかどうかもポイントになる。

 世代交代は多くのクラブが抱える問題でもある。たとえば、ガンバ大阪は若い選手が育たないから世代交代が進まないわけではない。「育った若手がずば抜けている」がゆえに課題を解消できないのだ。

 仮に、海外移籍した堂安律(フローニンゲン)、井手口陽介(グロイター・フュルト)らが、ずっとG大阪に在籍していたら、現在のチーム状況は違うものになっていたはずだ。海外クラブが食指を動かすほどの若手がいるがゆえに、それがチームづくりを難しくさせている側面もある。浦和にしても、長谷部誠(フランクフルト)や原口元気(ハノーファー)、遠藤航(シント・トロイデン)など、Jリーグから欧州リーグへステップアップしていった選手は多いが、今後もこうした流れは続くだろう。

 ただ、海外移籍した選手たちがキャリアを積んでクラブに復帰するサイクルができれば、クラブの強化はまた違うものになるはずだ。

 鹿島アントラーズがいい例だろう。海外移籍した小笠原満男や中田浩二といった選手たちはキャリア終盤には鹿島に戻り、その経験や『ジーコ・イズム』とでもいうべきクラブ哲学を、これから世界に飛び出そうとする若手たちに示した。そうした先輩の姿を見てきた内田篤人もまた、昨季から鹿島に復帰している。

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